幼なじみは、私だけに甘い番犬


『一緒に帰るから、待ってろ』

 椰子のスマホにメッセージを入れたのに、既読スルーされている。

 帰りのホームルームが終わり、話しかけて来るクラスメイトを軽くあしらって、隣りの教室へと。

「わぁ~っ、まめちゃん、頑張ってる!」
「結構時間がかかってさ、見守ることしかできなくて、超パニックだよ」
「産まれたの1週間前だっけ?もう抱っこできる?」
「出来るできる!ウチ来る?」
「行きたーい!」
「私も!!」

 教室の後ろのドアから中を覗くと、3人で固まって龍斗のスマホを見て会話していた。

「あ、玄希が来た」
「何の話?」
「俺んちの猫の話。先週子猫を産んだから、その時の動画を見せてたんだよ。で、2人が子猫見に来たいって言ってんだけど」
「…………」

 3人の視線が俺に向けられている。

「いんじゃね?俺も行っていいんだろ?」
「うんうん。じゃあ、お昼ご飯とかコンビニで買って、俺んちでお昼しようか」
「やったぁ!」

 3年の空白の時間が、たった1日で埋まるとは思ってないが。
 俺のいない間にできた3人の輪は、思ってた以上にがっちりと固まってるみたいだ。

「玄希、ごめんね?」
「何で謝ってんだよ」
「だって、帰りたかったんじゃないの?」
「別に」

 俺の顔色を窺うように、眉根を下げて椰子が俺の顔を覗き込んで来た。