幼なじみは、私だけに甘い番犬


 17時半過ぎに帰宅した椰子。
 玄関にある、男物の真新しい白いスニーカーに目が留まる。

拓兄(たくにい)、また買ったの?!」

 椰子(なこ)の3歳年上の兄・(たく)は、スニーカーを集めるのが趣味。

 部屋の中はスニーカー専門店かと思うくらいディスプレイされていて。
 我が家の下駄箱の殆どのスペースに、同じようなスニーカーが陳列されている。

 私は呆れ顔でリビングキッチンに顔を出す。

「ただいま~」
「あっ、おかえり~~」
「拓兄、また新しい靴を買ったみたいだよ」
「え、そうなの?」
「ん~。……着替えて来るね」

 両手にいっぱいの荷物を持っている私は母親にチクって、パタパタとスリッパ音を響かせながら、足早に二階の自室へと向かう。

「あっ!……行けばわかるわよね?」

 キッチンで豪勢な夕食を用意している母親は、リビングドアを見つめ呟いた。


 椰子は自室のドアを開け、フゥ~と大きな溜息を吐く。
 両手いっぱいに抱えていた紙手提げ袋をドレッサーの横に置き、ショルダーバッグをドレッサーの上に置こうとした、その時。

 ドレッサーの鏡越しに、異様な光景が目に飛び込んで来た。