5年後
『ママ!!芽が出たよ!!』
夏の日差しが照りつける中、
座り込んで不思議そうに畑を見つめる
小さな姿に、日傘をさして影を作った
「燦(さん)が沢山
お世話したからだよ。
どんなお花が咲くか楽しみだね。
暑いから向こうで休もうね。」
『うん、あっちぃね。』
立ち上がった息子の帽子を取ると、
汗をかいた髪をタオルで優しく
ふき、手を繋いで大きなエゴノキの
木の下に移動した。
『ここにある花と木はパパとママが
育てたんでしょ?』
「そうだよ。燦も大きくなるように、
愛情かけて育てるとちゃんと大きく
育つの。」
凪が作ってくれたテーブルと椅子に
腰掛けると、気持ちのいい風が
サッと吹き抜けた。
結婚して、ありがたいことにすぐに
燦を授かった。
先生とも相談をして、自然分娩ではなく
帝王切開での出産になったけれど、
この手に我が子を抱けた時の感動は
今でも忘れられない‥‥
『皐月‥今日は暑いから無理するな‥
身重なんだから。』
『パパ!聞いて!!僕が植えた種がね、
芽が出たの!すごい?』
工房から出て来た愛しい人が、私の
お腹をさすると、隣に座り、膝の上に
燦が座った。
『スゴイぞ。花が咲く頃には燦も
お兄ちゃんだな‥‥。』
『そうだよ!僕お兄ちゃんだから、
花奈(はな)ちゃん大事にするんだ!
ママに似て絶対可愛いもん!』
「ふふ‥‥燦はパパに似てカッコいい
もんね?」
『フッ‥‥』
2人目の妊娠は難しいと言われていた
中で自然に授かった事に凪と2人で
喜び、性別が分かった時に燦が決めた
花奈という名前をずっとお腹に向かって
呼びかけている
燦を産んだ後、暫く出ていた発作も
落ち着いたものの、凪はいつも体調を
気にかけてくれた
『暑いからもう一度お水あげて
もいい?』
『ああ、いいよ。行っておいで。』
立ち上がり、燦を見つめると、
隣に立つ凪が私の肩をそっと抱き、指で
顎を捉えられると唇にキスを落とされた
「ッ‥なに?急に‥‥」
『フッ‥‥カッコいいなんて
言われたらな。』
「凪はずっとカッコいいよ‥‥。
いつもありがとう‥‥。」
クスクスと笑うだけで何も言わない
凪に寄りかかると、凪の心臓の音に
瞳を閉じた。
色々な事があったけれど、
この場所でこれからも生きていく‥‥
命ある限りこれからもずっと‥‥。
『あっ、ママ!!ママの
じいじとばあばが来たよ!!』
遣らずの雨 下巻
完結
『ママ!!芽が出たよ!!』
夏の日差しが照りつける中、
座り込んで不思議そうに畑を見つめる
小さな姿に、日傘をさして影を作った
「燦(さん)が沢山
お世話したからだよ。
どんなお花が咲くか楽しみだね。
暑いから向こうで休もうね。」
『うん、あっちぃね。』
立ち上がった息子の帽子を取ると、
汗をかいた髪をタオルで優しく
ふき、手を繋いで大きなエゴノキの
木の下に移動した。
『ここにある花と木はパパとママが
育てたんでしょ?』
「そうだよ。燦も大きくなるように、
愛情かけて育てるとちゃんと大きく
育つの。」
凪が作ってくれたテーブルと椅子に
腰掛けると、気持ちのいい風が
サッと吹き抜けた。
結婚して、ありがたいことにすぐに
燦を授かった。
先生とも相談をして、自然分娩ではなく
帝王切開での出産になったけれど、
この手に我が子を抱けた時の感動は
今でも忘れられない‥‥
『皐月‥今日は暑いから無理するな‥
身重なんだから。』
『パパ!聞いて!!僕が植えた種がね、
芽が出たの!すごい?』
工房から出て来た愛しい人が、私の
お腹をさすると、隣に座り、膝の上に
燦が座った。
『スゴイぞ。花が咲く頃には燦も
お兄ちゃんだな‥‥。』
『そうだよ!僕お兄ちゃんだから、
花奈(はな)ちゃん大事にするんだ!
ママに似て絶対可愛いもん!』
「ふふ‥‥燦はパパに似てカッコいい
もんね?」
『フッ‥‥』
2人目の妊娠は難しいと言われていた
中で自然に授かった事に凪と2人で
喜び、性別が分かった時に燦が決めた
花奈という名前をずっとお腹に向かって
呼びかけている
燦を産んだ後、暫く出ていた発作も
落ち着いたものの、凪はいつも体調を
気にかけてくれた
『暑いからもう一度お水あげて
もいい?』
『ああ、いいよ。行っておいで。』
立ち上がり、燦を見つめると、
隣に立つ凪が私の肩をそっと抱き、指で
顎を捉えられると唇にキスを落とされた
「ッ‥なに?急に‥‥」
『フッ‥‥カッコいいなんて
言われたらな。』
「凪はずっとカッコいいよ‥‥。
いつもありがとう‥‥。」
クスクスと笑うだけで何も言わない
凪に寄りかかると、凪の心臓の音に
瞳を閉じた。
色々な事があったけれど、
この場所でこれからも生きていく‥‥
命ある限りこれからもずっと‥‥。
『あっ、ママ!!ママの
じいじとばあばが来たよ!!』
遣らずの雨 下巻
完結



