遣らずの雨 下

彼って‥‥‥なんのこと‥‥?


『ちょっと待った‥‥君‥‥凪と
 前に付き合ってた子だよね?』


えっ?


羽鳥さんの言葉に驚いて顔を向けると、
私の方を見て小さく頷いた。


『俺もなんか見覚えあると思った。
 付き合ってたというよりも、
 付き纏ってた感じだったけどな?』


『煩い!!あんたが来なければ、凪は
 私の方を見てくれてたのに、仕事で
 一年ここを離れて楽しみに戻って
 みれば第一声があんた誰って‥‥ッ。
 忙しいから帰れよって‥‥。
 だからあんたのことを消してやれば
 って思ったのに凪があんなことに。
 全部あんたがここに来たせいで
 狂ったのよ!!』


そんな‥‥‥ッ‥
凪は私を守ろうとして‥怪我をしたの?


彼女がとった行動に嫌悪感しか
抱けず、吐き気と共に口を押さえると
柿添さんが倒れそうになった私を
支えてくれた。


本当に好きな人と結ばれなかった気持ちは痛いほどよく分かる‥‥。
それでもその人の幸せを願うのが私は
本当の愛だと思っていた‥‥。


それなのに‥‥傷つけることしか
考えれないなんて‥‥‥。


「私が消えても凪があなたのような人の
 元に行くはずない‥‥」


『は!?』


「凪のいいところを何も知らない
 あなたに、凪を傷つける権利なんて
 ない!!好きな人には‥‥ッ‥‥
 笑ってて欲しいって思わないの?
 なんて酷いことを‥‥‥。
 凪が‥‥凪がこのまま目を
 覚まさなかったら‥ッ‥‥あなたは
 それでも自分のしたことが正しいって
 言えるの!?」


『皐月ちゃん‥‥』


羽鳥さんもそばにきてボロボロに泣く
私の肩を抱き寄せてくれる


我慢してたのに、凪の笑顔が2度と
見れなくなったらと思うだけで、
心が壊れてしまいそうだ‥‥。


大声を出して叫ぶ女性を警察官が
3人がかりで押さえながら連行される
様子を私達は黙って見つめるしか
出来なかったけど、彼女には、自分が
したことの重大さをちゃんと受け入れ
て罪を償ってほしい‥‥‥。


‥‥‥もう‥‥朝がくる‥‥‥


事情聴取を終え、3人ともクタクタに
なり、それぞれが倒れるように眠った
朝方。


凪‥‥‥‥怖かったね‥‥‥。
私を守ろうとしてくれたこと、嬉しい
けれど、とてもツラい‥‥‥。


責めるなんてことはしたくない‥‥。
だから、ありがとうって一言あなたに
伝えたい‥‥。