遣らずの雨 下

夕食は凪のために作った食事を
2人に食べてもらい、シャワーを済ませるとベッドに横たわってもまだ尚
体が震えていることに気付く


凪‥‥‥‥今‥‥どうしてる?
目は覚ましたの?
凪の声が‥‥聞きたい‥‥‥


震える手でスマホを操作すると、
凪の写真を目にした途端また涙を流し
シーツに潜り朝まで殆どの時間を
眠れずに過ごした。


カタッ


朝方、小さな物音に気付き起き上がると
階段の上で私に向かって静かにする
ように指を口に当てた柿添さんと
目が合い小さく頷くと静かにそこへ
向かった


えっ?‥‥何‥‥?‥‥誰かがいるの?


そっと階下を覗くと、階段下に羽鳥さん
が隠れているのを見つける


とにかく声や物音を立ててはいけない
緊張感が2人から伝わり、口元に手を
当てると、また一階で物音が聞こえた



怖い‥‥‥
もしも本当に誰かがいるとしたら、
1人だったらどうなっていただろう?


羽鳥さん達はもしかして、これを見越して泊まってくれていたのだろうか?


『(皐月ちゃん、遊が合図したら
 俺も行くから、絶対に呼びに来るまで
 ここから動かないで。)』


小声で耳打ちされ何度も頷くと、
次の瞬間ガタガタっと大きな音がして、
羽鳥さんと柿添さんが一気に下へ
向かった。


怖くて、何が起きてるか分からない
不安と、また2人が凪のように怪我を
してしまったらという怖さにかられる。



柿添さんのドスの効いた低い怒鳴り声や
何かが倒れるような大きな物音に
ビクビクしながらも、言われた通り
そこに隠れているうちに静かになったのかそっと階下を覗いた


そして暫くすると聞こえて来たまた
サイレン音が鳴り止み、明かりと共に
大勢の話し声が聞こえ、階段を
駆け降りたのだ


「‥‥ッ!!」


取り押さえられていたのはまさかの女性
で、勝手に男性だと思い込んでいた私は
目の前の現状に動揺を隠せない


この人が‥凪を傷付けたの?


『皐月ちゃん!この人に見覚えある?』


「‥いえ‥は、初めて見ます。」


まだここに来て1年くらいだけど、
顧客様の顔は覚えているし、来店される
方の中にも彼女のような人は記憶にない


じっと見つめてしまっていたのか、
床に押さえられていた彼女が私を
見つけた途端、顔付きが変わり、
真っ直ぐに睨み付けられる



『あんたが彼を誘惑したんでしょ!?』


えっ?