遣らずの雨 下

言葉って破壊力があると同時に、
嘘偽りない真っ直ぐなものだと、
人を簡単に黙らせ納得させてしまう‥‥


凪の言葉はいつも真っ直ぐで、
そこに嘘がないということは、
それ以上聞かなくても何故か分かる


コクッと頷く私を見て納得したのか、
手を繋がれると、河原に戻る間も
凪の横顔を何度も見上げた。



『はぁ‥‥美味かった‥‥。
 仕事せず昼間から飲んで、ダラダラ
 とできる時間以上に最高なものは
 ないな。』


ふふ‥‥柿添さんってば、
珍しくほろ酔いな感じでデッキチェアに
寝そべっている。


釣った魚も初めて塩焼きにして焼きたてにかぶりつき、その美味しさに感動
してしまったし、冷麺もみんな残さず
食べてくれた。


こんな暮らしが毎日出来たらほんとに
最高に違いないけど、働かないと
生きていけない‥‥


でも‥‥便利なものに囲まれてない
生活って本当にリラックスできる‥‥


比較的涼しいこの場所で、河原に足だけ入れて涼むのもとても気持ちいい。


名古屋だったら自然が少ないから
クーラーがない場所で長時間は
とても過ごせないからな‥‥‥


『皐月』


「ん?なに?‥‥わっ!アイスだ!」


『利用者は管理棟に行けばアイス無料で
 貰えるから。』


なんて素敵なシステム‥‥。
私はみんなみたいにお酒が飲めないから
凪が持ってきてくれたアイスに
笑顔が溢れてしまう。


『凪ーー俺らの分は?』


『は?酔っ払いは自分で行けよ。
 可愛い子達が沢山いたぞ?』


『マジかよ!!遊!!行くぞ!!』


2人のテンションの変わり様に、
女性が大好きな事を忘れていたが、
柿添さんも羽鳥さんも顔色が変わった
ように笑顔で出かけて行った。


「本当に2人とも楽しい人だね‥‥。
 凪の周りは笑顔が絶えない。」


工房に来る取り引き先の仕事関係の
人も、ショップに来てくださるお客様も
みんな笑顔になれる場所に居られる
事が本当に幸せだと思う


『フッ‥‥お前が楽しいなら俺は
 それでいい。』


「楽しいよ‥‥多分生きてきて今、
 1番そう思えてる。
 悲しい事、ツライ事もあったけど、
 そんなのに負けないくらい今が
 楽しい。‥‥‥凪のおかげだよ。」


初めからぶっきらぼうな凪だったけど、
沢山色々な表情を私に見せてくれた。
私も凪という存在があるから、私らしく
生きようと思えた。


だから‥‥願うなら‥ずっとそばに
居させて欲しい‥‥