遣らずの雨 下

『なんか‥凪さ‥変わったね?前は
 もっと夜もずっと遊んでたのにさ。』


『フッ‥お前らが変わらなさ過ぎ
 なだけじゃねぇ?』


『はぁ?何それ!!あたしはいつまでも
 良い女だもん!‥どう?より戻す?』


えっ?


『茉美、それなら先に私でしょ?
 凪‥明日休みでしょ?久しぶりに
 うちに泊まる?』


んん?


食事が運ばれて来て、みんなお酒も
進む中、柿添さんがまだ到着せず、
羽鳥さんと話しながら過ごしている間も
目の前の3人の会話の内容に耳を塞ぎ
たくなる時が何度もあった。


『クス‥皐月ちゃん‥凪が気になる?』


えっ?


ニヤリと笑う王子様タイプの羽鳥さんに
勢いよく横に首を振る


気になるというか、凪の知らない一面
だから驚くことが多くて‥‥


『ブッ‥‥やっぱり面白いね。
 素直というか鈍感というか、天然?』


「ち、違いますから。」


何かと凪と私の繋がりを消さないように
仕向けてくる羽鳥さんに全力で否定を
する。

 
その後も柿添さんが合流して、楽しく
食事会は無事に済んだものの、慣れない
人間関係に1週間働くよりも疲れた


『凪、2軒目行こーよー。』


『皐月いるからまた今度な。』


あ‥‥そっか‥‥
代行で帰るから、私に気をつかって‥‥


いつも頑張ってる凪だからこそ、
忙しくなる前にお友達と楽しんで欲しい




「凪、私大丈夫だからみんなと
 行っておいでよ?近いからタクシー
 かバスがあれば乗って帰れるし。」



ただ帰る場所が同じというだけで、
凪を制限させるのも違うと思うし、
私もいい大人だから1人でもどうって
ことない。


『皐月さんは行かないの?』


「えっ?私は先に帰りますね。
 今日は楽しかったです、ありがとう
 ございました。じゃあね、凪。」



凪の腕にギュッと抱きつく茉美さんに
笑顔でそう答えると、駅に向かって
歩くことにした。


グイッ


ん?


進みたいのに、左肘辺りを引っ張られ
後ろを振り返ると、凪が眉間に皺を
寄せた顔で私を見下ろしている


「な、何?どうかした?」


怒ってる?
それとも機嫌が悪いだけ?


どちらにしろ、表情からして穏やかでは
ないのが伺えるのだけは確かだ。


『お前さ‥‥何1人でさっきから
 勝手に決めてんの?
 来る時に代行頼むからそれで一緒に
 帰るって言っただろ?』


えっ?