遣らずの雨 下

自分が自然に笑顔になっていた事にも
驚くけど、変なヤツって言われても
なんとも思わない。


ただ良かった‥‥って思っただけ‥‥


それから、暫く忙しい日々を
過ごしていると、夕方になる頃にまた
凪の妹さんがひょっこり現れて驚いた




『‥‥あの‥‥凪は居ますか?』


今日もとても可愛さと綺麗さが
入り混じったような容姿で、スタイルも
モデルさんのように細い


「今、羽鳥さんの事務所に出かけて
 いて30分くらいしたら戻ると
 思いますが、連絡しましょうか?」


『う、ううん!!連絡しないで!』


えっ!?


凪が居なくてもいいということは、
何しにここに来たのだろう?


まさかただの買い物に来たとは思えない
し、やっぱり会いたいんじゃ‥‥


『あ‥‥あの‥私、凪‥いえ、兄の
 妹の葉山 つかさです。』


「あ‥えっと‥‥こちらで住み込みで
 お世話になってます新名 皐月です。
 ご挨拶が遅くなりすみません。」


美女に頭を下げられ、仕事着を
なんとなくパパっと綺麗に正してから
私も頭を下げた


まさか挨拶されるなんて思っても
おらず、変に緊張してしまう


『お仕事中に来てすみません。
 でも‥‥どうしても兄に家に
 帰ってきて欲しくて、新名さんに
 もお願い出来ないかなって‥』


えっ?


凪の家はここじゃないの?


あ‥‥でも‥ここは亡くなった祖父母の
残した場所だから本当の家は別なの?


私の知らないことは勿論沢山あるとは
思っているけど、妹さんの話を凪が
留守の時に勝手に聞いていいか躊躇う


「あの‥‥すみません‥‥。
 私はただの社員で、ご家庭の事は
 聞くべきじゃないと思うんです。」


『そこを何とかお願い出来ないかって
 来てるんです!!父が‥‥倒れて‥』


ドクン


お父さんが‥‥?


目に涙を溜めて泣き始めた妹さんに、
仕事中でいつお客様が来るかも分からないからと、とりあえず2階に案内して、
落ち着くまでここで休んでと伝えた。


凪が帰ってきたら2人でちゃんと
話をした方がいい‥‥。


今聞いた事は聞かなかったことに
すれば私は問題ないから。



『ありがとうございました。
 またいらしてくださいね。』


鉢植えを購入しに来てくださった
お客様をお見送りする為ドアを開けると
、ちょうど凪の車が坂を登ってきた


ガチャ バタン


「おかえり‥‥あの‥‥つかささんが
 来て、2階で待ってるよ‥。」