遣らずの雨 下

世の中に1人で生きてる人なんて山ほど
いると思うけど、私もずっと1人で
生きていくものだと思っていたから、
当時の寂しさや不安が蘇ってしまった


『‥‥そんな顔すんな。』


「ご、ごめっ‥‥‥」


『今は皐月がいるじゃん‥‥
 俺‥お前の作る飯嫌いじゃないよ‥』


凪にとって私のような存在でも1人きり
だと感じないのならありがたい。
友達も沢山いるから私とはまた違う
寂しさはあったのかもしれない。


私のご飯が好きとは言わないところが
凪らしいけどね‥‥


凪‥‥

私もね、今1人じゃないと感じるのは、
凪がこうしてそばにいるからだと
思ってるよ‥‥


自分の生きられる人生で出会える人は
限られているかもしれない


沢山の人と出会う人もいれば、私のように少ない人もいる


でもそれを選んだのは自分であって、
その結果が今の人生なんだと思う


私は‥‥多くなくてもいい‥‥
少なくても、幸せだったと自分が
感じられればそれで‥‥‥。



「そうだ!ちょっと待ってて‥」


何を思いついたのか、引き出しから
メモとペンを取り出して戻ると、凪がながら私を覗き込む


「はい、これ‥」


『なんだよ‥‥‥‥フッ‥‥
 ほんとお前‥変わってるな‥ハハ。』


「うん‥‥」


『お前みたいなヤツ初めてだわ‥‥。』


無愛想だからこそ、凪が笑うのは
嘘のない笑顔だと信じられる


凪は寂しさなんて微塵も感じてない
かもしれない。それでも、恋人や
大切な人が出来るまではこうして
一緒に食事をしたいと思いメモに
《お食事券》と書いたのだ。






『フッ‥これ‥‥何回有効な訳?』


「えっ?‥‥そ、それは考えて
 なかった。」


気が向いた時や、お腹が空いた時、
誰かと一緒に食べたいなと思ったら
使って?ぐらいにしか思ってなかった
から、乗り気な凪に対して悩む


回数券でも作る‥‥とか?


『じゃあ‥‥明日からずっとだな。』


えっ!?


「そ、それは飽きるんじゃない‥?」


『お前に飽きるかよ‥‥ペン貸して?』


箸を置いた凪にペンを渡すと、
私が書いたメモに何かを書き始めた。


私に飽きるかよ‥‥って‥‥そんなに
変わってるかな‥‥


人付き合いをしてこなかったせいで、
自分の行動がもしかしたらおかしな
事をしてしまっているのかもと不安に
なっていると、目の前に差し出された
メモを恐るおそる受け取った