ドーナツは白いレースのついた犬用の服を着てソファで腹を上にして無防備に白目をむいて気持ち良さそうに眠っていた。
「またブサイクな顔で寝てる……」
起こす前に写真でも撮っておくか。
スマホを取り出してカメラを起動させてドーナツの寝顔を写真に撮る。
カシャッ
シャッター音がするとドーナツは飛び起きた。
「ヴーッ!バウッ!バウッ!」
「いててっ!噛むんじゃねぇよ!ふざけんなっ!」
寝顔の写真を撮っていた事がわかったのか知らないが、ドーナツは俺の手をがぶがぶと噛んでくる。
「ちょっと何してるの?遊んでないで早くお着替えさせてね?」
「遊んでねぇよ!ドーナツが噛んで来るんだよ!」
「ドーナツのお着替え早くすませちゃってね」
「ドーナツ、早く着替えさせろ!俺は腹減ってんだ!」
片手を噛まれたままドーナツの着ている服を脱がせて、室内用と何が違うのかよく分からない散歩用の花の飾りのついた服を何とか着せてやる。
ドーナツはずっと俺の手を噛んでいたが、母さんのところへ連れて行くとすぐに俺から離れて母さんのところへ行く。
「くぅーん」
「あらぁ!ドーナツちゃん可愛いお洋服着せてもらえて良かったわね~」
ちなみにドーナツは俺以外の家族を噛んだりする事は一切ない…結構世話してやってんのに俺にだけ懐いていなくて腑に落ちない。
「そういえばありすは?帰ってきてないのか?」
「あーちゃんはお友達のお家でお友達のお誕生日会に行ってるわ」
ありすというのは小学二年生の妹だ。
ドーナツと違って俺によく懐いていて、ドーナツの散歩に行くとなれば絶対着いてくるが今日はいないのか。



