普通の学生生活を送りたかったが、こうなってしまってはそれもかなわないだろう。
完全に諦めながら一度職員室に向かい、クラスの表に書かれていた担任の藤森(フジモリ)先生のところへ行く。
藤森先生は中学一年の時も担任だったから結構馴染みのある先生だ。噂の発端となった事件の時俺が仲裁に入っただけだということを信じてくれた事もあり、結構信頼している。
「おお、早乙女!今年も担任だな。よろしくな!何かあったか?」
「いや…大した事じゃねぇけど……これ同じクラスの男子に押し付けられたから先生から返してやって欲しい。相手の名前はわかんねぇからなるべく早く名前伝える」
そう言って押し付けられたクラスメートの財布を渡した。
「また何か勘違いされたのか…先生から渡すのは良いが、自分で渡した方がクラスに馴染むチャンスじゃないか」
「…別に今更クラスに馴染まなくてもいい。また勘違いされそうだし出来るだけ余計な事したくない…それじゃあ、今年も宜しくお願いします」
俺はすぐに職員室を出て、教室へと向かった。
朝の失敗で完全に心が折れていて、高校生活は完全に諦めた。
卒業して大学に通うようになっても何か変わるとは思わないが、今から高校生活を挽回出来るとは思えない。
いつもの様に誰とも交わらずに自分の席に座っていると新しいクラスでのホームルームが始まった。
…隣りの席の奴来てないな。
始業式から遅刻か欠席か?
まぁ、俺に関係ないけど。
俺の席は2列目の一番後ろの席で、今空席なのは一番後ろの端の席だ。
隣りが俺で反対隣りもいないどん詰まりの席だからここの席の奴絶望するんだろうな…
藤森先生が新学期の挨拶をしているのをボーッと眺めて、半分飽きていた時だ。
「連絡事項の前に転校生を紹介する。姫野(ひめの)さん入ってきてください」
ガラッ
転校生が入ってきて、目を向けると瞬間衝撃を受けた。
今まで見た人類の中で一番……可愛い………!!
転校生は芸能級の美少女で、天使の輪が出来ている色素の薄いサラサラな髪も瞳がキラキラしたまつ毛バサバサの大きな目も肌の透明感もすごくて光って見える。俺には眩し過ぎた。
「ぇっと……姫野美羽(ひめの みう)ですっ…よろしくお願いします…」
緊張しているようで頬を染めて俯いて自己紹介している姿に胸が熱くなる。
声も可愛いな…って、いくら転校生が可愛くても俺には全く関係ないけど。
クラスメートではなく、動画とかテレビやアイドルグループとかだったら心置きなく推せたが逆にクラスメートになるとな…今まで好きな子はおろかそういうお気に入りの芸能人とかもいた事なかったが、ドタイプだ。
こんな美少女をドタイプとか俺って相当面食いだったんだな…
俺が見てる事気付かれたら怖がらせてしまう。



