
♡イラスト 芳乃カオル様♡
高校二年の春。
今日から新学期が始まる。
人が集まっている新しいクラスの表の前に行くと、俺に気が付いた集まっていた生徒達がすぐに離れていく。
「なぁ、見てみろよ!同じクラスに早乙女 海麗(サオトメ カイリ)ちゃんって女子かいる!名前からして美人そうじゃね!?」
貼りだされている表の一番前にいる男子が高めのテンションで話している。
早乙女海麗は俺の名前だ。
うちの学校は中高一貫校で俺の事を知らないという事は高校から入学してきた生徒だろう。
中学時代の俺の噂知らなそうだし声……掛けてみるか?
しかし、何て声掛ければいいんだ?
残念でしたー!早乙女海麗は俺でーす!みたいなテンションで声掛けねぇとまた勘違いされるかもしれない。
いや、元々そんな陽キャな性格じゃないのに無理。
どう声を掛ければいいか考え込んでしまう。
「馬鹿!それ女子じゃねぇよ!中学からいる奴に聞いた話だと早乙女って…ヒッ!さ、早乙女…」
「早乙女?ひいぃっ!名前勘違いしてごめんなさい!!慰謝料ある分だけでも払いますからっ!」
「ハ?えっ…おい」
俺の名前を女子と勘違いした生徒は何故か財布を俺に押し付けて一緒にいた生徒とすごい勢いで後者の中に逃げて行ってしまった。
「ヒソヒソ…えー?なになに?」
「ヒソヒソ…早乙女君が新学期早々クラスメートにカツアゲしてる…」
クソ……失敗した……
普段気を付けてはいたが、俺は顔付きは日本人ではあるがアメリカ人の祖母のアメリカの遺伝子のせいか昔から同学年の生徒より体がデカく筋肉質であり、その上顔は強面で集中したり考え込んだりすると眉間に皺が寄って一層悪人面になるらしい。
この見た目のせいで中学時代に勘違いから俺が凶暴であるという噂が流れ、噂に尾ヒレがついて今では誰も俺に近付こうとはしない。
自分のクラスを確認してその場を離れると、俺の前を歩いていた女子生徒の鞄に付いているぬいぐるみキーホルダーが落ちて俺の方に転がってくる。
多分3年の女子だ…違う学年なら大丈夫か?
「…おい」
「え?」
「これ…」
どうにか笑顔を作れ…俺…
「あ、ありが……ひゃあッ!ごめんなさいっ!」
その女子は俺の引きつった笑顔をを見るなり俺の手からぬいぐるみをバッと取り、逃げるように校舎の中に走り去って行った。
笑顔作ってもダメなのかよ。
「…うわぁ…また早乙女君だよ」
「女子にまで脅しかけたの?見境なくて怖っ」
後ろからまたヒソヒソ声が聞こえてバッと振り返るとそこら辺にいた生徒達はサーッといなくなっていく。
新学年の出だし最悪だ……今年もまたこの学校生活が始まるのか。



