お世辞でも社交辞令でもなく“ただそう思ったから口にしただけ”としか思えない、ぽそりとした呟きに、ふふんと鼻を高くする。
「言ったでしょ、こういうの得意なんだって」
「へえ。……てっきり口任せに言ったのかと」
もう、一言多いなあ。
さすがにちょっとは言い返さなきゃ気が済まない。
そう思って口を開きかけたタイミングで。
「ありがとう、助かった」
飾らず真っ直ぐな感謝の言葉が飛んできた。
――――んん、調子が狂うな。
もうすぐで声になるところだった非難めいたセリフは宙ぶらりんになって、代わりに「へへ」と曖昧な笑い声を上げる。
どうにも気まずくて、壁にかけられた時計に視線を逃がすと、最終下校時刻までは、まだそこそこ時間があった。
「あの、他に手伝えることってあったり……」
「いや、今日はもうない」
「そっか! じゃあ私は、これで……」
くるりと背を向けて、鞄を手に取ろうとしたら。
「待て」
抑揚のない声に呼び止められた。



