早口に畳みかけられてしまった。
あ、ひどい、そんな言い方って────とむっとしたタイミングで、右手に握っていたボトルの存在を思い出す。
「そうだ、これ、あげようと思って買ってたんだった」
「は?」
氷上くんに差し出したのは、レモンスカッシュのペットボトル。
職員室から生徒会室に向かう途中にあった自販機で買ったばかりで、ひんやり汗をかいている。
「遅くまでお疲れさま、ということで差し入れです」
まさか、生徒会長がこんな時間まで1人で仕事をしているなんて今まで知らなかったから。
しかも、久城先生の口ぶりから、これが日常茶飯事なのだと察すると、労わずにはいられなかったの。
「要らない」
「ええっ。どうして、レモン苦手?」
「別に苦手じゃない」
「なら! ビタミンCは疲労回復にいいんだって」
「いい加減にしろよ、さっきから。俺、あんたみたいなのに構ってる暇ないから。教えてやるけど、そういうの、ありがた迷惑って言うんだ。本当に労う気があるなら、さっさとここから出てけよ」
視線ひとつもくれず矢継ぎ早に投げかけられた、トゲのある言葉たち。
なんて、感じ悪いんだろう!
男バスの部員たちだったら、差し入れでも配ろうものなら、満面の笑みで飛びついてくるのに。
ええい、そっちがそのつもりなら、こっちだって頑なになるしかない。
「せめて、ひと口だけでも────わっ!」
勢い任せにキャップを開けると、プシューッと激しく炭酸が抜ける音とともに、淡黄色の液体が吹きこぼれていく。
突然のことにあんぐりと口を開けて固まる私の視線の先で、ボタボタとこぼれる液体が、机の上のありとあらゆる書類を濡らしていった。



