君のせいで遠回りする


手渡された紙束とホチキスと氷上くんとの間を、2度見3度見、きょろきょろと視線を行き来させる。


あ、雑用って、ほんとうに“THE・雑用”的な。

もっと難しいことをすることになるのかと身構えていたけれど、拍子抜けだ。



「任せて、こういうの得意なんだ!」



氷上くんの真向かいの席に座って、早速カチ、カチと書類を留めていく。


伊達に運動部のマネージャーやってない。

こういう、地味でちまちました作業をこなすのは苦にならない方だ。



とはいえ……こんなに静かだと緊張しちゃう。

ホチキスの音と紙をめくる音と、氷上くんがタイプする音が代わる代わる響くだけの空間は息が詰まってしまいそうで。



今すぐにでも沈黙をやぶってしまいたいけれど、氷上くんはすごく集中しているみたいだし、それをジャマしてしまうのも忍びないし……。



――――結局、ひと段落するまで喋るのをガマンして、唇は引き結んだままだった。



「終わったよ」



渡された分のホチキス留めをすべて終えて、声をかけると、氷上くんは目を丸くした。



「……早い」