君のせいで遠回りする


「別に、茅原さんがすっぽかすだろうと思ってたわけじゃないけど」

「けど?」

「けど――――、……妙な感じだなって」



氷上くんがぼそりと呟いた後半の言葉はうまく聞き取れなかった。

咄嗟に聞き返そうとしたけれど、それより先に氷上くんが口を開く。



「部活は? 今日はもう終わったの」

「あ、うん。ついさっき……」



去年、2つ上の先輩が引退してからというもの、男バスのマネージャーは私1人だけ。

誰かに仕事を託すこともできず、いつにも増して爆速で片付けをする私に、椿は物言いたげにしていた――――というか、実際何か言っていたような気がする。そういえば、さっきだけじゃなくて朝練のときも。



氷上くんの仕事を手伝うことにしたからには、少しでも早く生徒会室に向かわないと、と急ぐあまり椿のことを丸無視してしまった。どうせ大した話じゃないだろうし、明日もまた顔を合わせるし。



「そう」



自分から聞いてきたくせに興味なげに相槌を打った氷上くんが、「はい」と私に寄越したのは紙束とホチキスで。



「これは……」


「今日の仕事。5枚1セットで左上1箇所でホチキス留め、お願いします」