君のせいで遠回りする

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「――――……だって」


「ふあ、……? 今、なんて?」



トーストをかじりながら、ぼんやり聞いていたから、全然頭に入ってこなかった。

くあ、と大きなあくびを零すと、お兄ちゃんは呆れたようにため息をついた。



「今日、降水確率90パーだってさ」

「そうなの?」

「傘持ってけよ。急に『迎えに来て』って呼び出されんの、もう懲りごりだから」

「もー、その件は申し訳なかったって思ってるよ!」



本当かよ、と意地悪なことを言ったかと思えば、「じゃあ、俺もう出るから」と慌ただしく玄関へと駆けていく。


今日も朝からバスケの練習らしい。

この春、スポーツ推薦で大学に進学したお兄ちゃんは、中高生の頃から少しも変わらずバスケ漬けの日々を送っている。


肩から提げたエナメルバッグの光沢が勲章みたいに輝いていた。



「まひるもぱぱっとご飯食べて支度しないと遅刻するわよー」

「はぁーい」



うとうとしながら生返事すると、お母さんは「もう」と唇をとがらせて。



朝希(ともき)を見習って、もうちょっとしゃきっとしなさいよー」



聞き飽きた、定番のお小言。


はぁい、と返事して、トーストの残りを一気に口に詰め込んだらむせそうになって、慌ててコーンスープで流し込んだ。