君のせいで遠回りする

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久城先生の満足気な笑みに見送られ、氷上くんとふたりで職員室を出た。


蛍光灯の眩しく白い光で、廊下に2つの影が並んで伸びる。



「本当によかったの?」

「……ええと?」


「部活。あったんだろ」


「ああ、うん。大丈夫だよ。逆に、補習免除になって、ありがたいくらい」


「あんなテストで赤点取る方がどうかしてるけど」


「うっ……。どうせ、私は氷上くんみたいに頭の出来がよくないですよーだ!」


「ああそう」



そっけない返事は相変わらずで、思わず笑ってしまいそうになった。



「そうだ、さっきの話に戻るけれど、私、たしかに部活もあるけれど、生徒会の仕事もちゃんとするからね!?」


「……は」


「やると決めたからには、ちゃんとやりますから!」



むん、とガッツポーズを作る。そういう性分なのだ。


ひとり気合いを入れる私に、氷上くんは目を細めた。




「茅原さん」


「……へっ?」


「あれ、名前違った? さっき先生にそう呼ばれてた気がしたんだけど」


「違わない! けど……」




急に呼ぶから、びっくりしてしまっただけだ。


氷上くんが口にすると、聞き慣れたはずの自分の名前が、まっさらな何かに変わってしまったような気さえした。



たどり着いた昇降口、半分開いた扉から春風がざあっと吹き込んでくる。



「……茅原さん。まあ、これから、よろしく」


「っ、うん! よろしくね! 氷上くん!」


「声大きいよ」




予感、なんて大それたものじゃない。

だけど心がざわめいて、何かが動き出したような気がしたんだ。