「仕事は、もう終わりそう?」
先生からの伝言は届けたのだから、そのまま背を向けてもよかったけれど、そびえ立つ書類の山がどうしても気になってしまった。
「あとこれだけ片付ければ」
「えっ、これ全部!?」
氷上くんがちらりと横目で見た書類の量に思わず声を上げる。
それは、最終下校時刻までの残りわずか10分間で、氷上くん1人で取りかかるには無謀な多さで。
「私、手伝うよ!」
「いい」
「2人でやった方が早いよ?」
「いいから」
「でも、1人じゃさすがに終わらないよ」
頑なに首を横に振る氷上くんにしびれを切らした私は、書類の山に手を伸ばす。
1人より、2人で進めた方が絶対いい。
単純計算で、作業効率は2倍 ────と考えたところで、ぱしん、と手が振り払われる。
「要らない、って言ってんだろ。邪魔なんだよ。気が散るから帰って」



