────と、その話は置いておくとして、とどのつまり、運動部だった時代があるんだから、これしきのものを運べないほど私は貧弱じゃないはず!
ふんぬっ!と力を入れ直したタイミングで。
「まひる」
「わあっ!?」
背後から急に名前を呼ばれてびっくりした。
肩をビクッと強ばらせて振り向くと、顔なじみの部員のひとりが、怪訝な顔をして立っていた。
「な、なーんだ、椿かぁ……。驚かせないでよ」
「こっちのセリフだっつの。急にデケー声出すなよ。ここ響くんだし、ビビるだろ」
朝比奈 椿。
同じバスケ部員でかつ、同じ中学校出身の同級生。
1年生の頃からスタメン入りしているバスケ部2年の絶対的エースで、次期キャプテンの有力候補でもある。
椿のエースっぷりは今に始まったことではなく。
隣のコートで練習していた中学生の頃から抜群に上手くて、「私もこんなプレイができたらな」って羨ましく眺めていたものだ。
「そっち貸せ。俺が運ぶ」
「えっ。いいよ、これ私の仕事だもん」
「あのなあ。さすがに1人でそれ一気にいこうってのは無理あるだろ」
ほら、と瞬く間にスコアボードを私の手から取り上げてしまう。



