隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

 前回までのあらすじ。
 社長と花火大会に出かけた。
 社長はクルーザーを用意していた。
 そこで指輪を渡され、プロポーズされた。
 クルーザーで花火に照らされながら一夜を明かした。

 こうして、私たちは婚約した。
 田舎の両親に、勤めている会社の若社長を射止めた話を報告したら、両親は卒倒しそうなほど驚き、祝福してくれた。
 今後は、スバルさんのご家族にもご挨拶に行かなければいけない。正直めっちゃ緊張する。
 私は専業主婦として家に入るか――社長だから専業主婦でも暮らしていける経済的余裕はある――スバルさんと話し合った末に、結局まだ藤井コーポレーションに残っている。
 まだ働きたいざかりだし、カードゲーム仲間もいるし、……まあ産休でも取ることにならない限りは働き続けると思う。
「こずえさん、仕事熱心なのは素晴らしいことですが、もうお昼休みですよ」
 今日もまた社長が迎えに来た。
「社長、会社では名字で呼んでくださいと何度も申し上げているでしょう」
「ですが、名字で呼んだらわたくしと同じですし」社長はくすくす笑う。
 そうだった。私はもう能登原こずえではない――藤井こずえだった。
「ですから、私のこともスバルで構いませんよ?」
「いえ、社長には社長っていう役職があるじゃないですか」
 お互いに譲れないものはあるが、まあまだ喧嘩したことのない仲良し夫婦――いや、婚約だからまだカップル扱いか? ――である。
 昼休みには相変わらず男性社員たちとカードゲームをしているが、社長の独占欲は婚約してからさらに表に出るようになり、男性社員が私の肩でも触ろうものなら社長がその社員に肩ポンし、私がそれを慌てて制止するような感じである。
 仕事が終われば社長の車に乗ってふたりで家に帰る。私はすでにあのアパートを引き払って、社長の家に同居している。毎日『マジック&サマナーズ』のデッキをふたりで組んだり、対戦したり、他のゲームもちょっとやって、眠くなったら一緒のベッドに眠るような、楽しい毎日を送っている。
「こずえさん」
「なんですか」
「……今、とても幸せです」
「そういう台詞って普通、女性が言うものじゃありません? ……私も、幸せですよ」
 ベッドの中で、手をつないで目を閉じる。
 この生活が、明日も明後日もその先も、ずっと続きますように。
 明日もお仕事がんばろう、と思いながら、私、藤井こずえは、幸福感に満たされて今日を終えるのである。

〈完……?〉