その手で触れて、そして覚えて。


「俺だったら、七花主任にそんなこと、」

と街風くんのその言葉の続きを聞く勇気がなく、わたしは、

「あああああああああ!!そ、そこがわたしの家!」

と街風くんの言葉を遮った。

「ここまで送ってくれてありがとね! せっかくの歓迎会だったのに。」
「いえ、大丈夫です。」

そう話していると、「お?七花?」 という聞き覚えのある声が聞こえてきた。

ゲッと思いながら、声がした方を向くと、そこには中学校からの腐れ縁でなぜか同じマンションに住んでいる東谷冬司の姿があった。

「あれ?その子は?」
「あ、新入社員の街風くん。」

冬司に街風くんを紹介したあと、わたしは街風くんに「街風くん、この人は知人の東谷冬司。」と紹介した。

「知人?中学校から知ってる割りに随分な紹介のし方だなぁ。」
「ただの腐れ縁でしょ?」

そんなわたしと冬司のやり取りを不思議そうに見ている街風くん。

「あ、それじゃあ!街風くん、今日はお疲れ様!送ってくれてありがとう!また明日ね!」
「はい、お疲れ様でした。」

わたしはこれ以上、あの場に居たら冬司が余計なことを言いそうだったので、慌てて冬司の背中を押し、マンションの入り口へと入った。