その手で触れて、そして覚えて。


その日の帰り、わたしが会社の1階のゲートに社員証をタッチして通り抜けると、後ろから「七花主任。」とわたしを呼ぶ声が聞こえた。

振り向くと、そこには社員証をタッチして急いでゲートを通り抜けて来る街風くんの姿があった。

「お疲れ様です。」
「お疲れ。」
「帰り、一人ですか?」
「うん、まぁね。」
「一緒に帰ってもいいですか?」

街風くんの言葉にドキッとしてしまうわたし。

いや、わたしは何をドキッとしてるんだ?

ただ、一緒に帰っていいか聞かれただけじゃないか。

「うん。、、、あ、そうだ。今日、街風くんには庇ってもらったし、何かお礼しないとね。何か食べに行こうか、わたしの奢りで。何食べたい?」

わたしが咄嗟に思い付いた事を言うと、街風くんは「七花主任の手料理が食べたいです。」と即答した。

「えっ?!わ、わたしの手料理?!」
「はい。」
「そんなのでいいの?遠慮しなくていいんだよ?」
「遠慮なんてしてないです。俺は、七花主任の手料理が一番食べたいです。」

真っ直ぐ過ぎる街風くんの言葉にわたしはNOとは言えず、「じゃあ、スーパー寄ってから、うち来る?」と聞いてみた。

すると、街風くんは嬉しそうに「はい。」と答えたのだった。