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「和葉ちゃん、典くん、起きる時間よ〜」
お母さんの呼ぶ声で、目が覚めた。
お母さん、こと桃子さんに引き取られて、もうすぐ1週間。
桃子さんは凄い優しくて、穏やかな人で、本当のお母さんとは大違い。
弟の典も、わたしもすっかり懐いている。
リビングに行くと、朝ごはんが用意されていた。
そして、エプロン姿のお母さんがいた。
「おはよう、お母さん…」わたしがいうと、お母さんが返事した。
「おはよう。よく寝れた?」
「うん。えっとね、夢も見て…」
といいかけたところで、典がやってきた。
「典くんおはよ。」
「おはよ〜お母さん、お姉ちゃん。」
「典おはよ。アンタも夢見た?わたしはね、見たんだけど…」
話し終えると、典がいった。
「へー変な夢。」
「でしょ?おかしいよね。」
典と喋っていると、「もう食べなきゃ冷めるよ!」とお母さんにいわれ、食べることに。
食べおわり、学校に行く準備をして、家を出た。
学校に着くと、ももちゃんがもう来ていた。
なんと、席替えで隣になれたのだ。
「和葉ちゃんおはよー。」
ももちゃんがいう。
「ももちゃんおはよう!」
わたしがいう。
ああ、なんて幸せなんだろう!友だちと隣なんて…!
「ねえ、知ってる?今日転入生が来るんだって!」ももちゃんがワクワクしていう。
「えっそうなの?男の子?女の子?」
わたしが興味深々できく。
「女の子らしい!気が合う子だといいな〜」
ももちゃんがこたえる。
「へー確かに!席空いてるとこって、ももちゃんの前かな?」
ももちゃんの前の席を見ると、前転校しちゃった子の席がある。
きっとそこだろう。
先生が入ってきた。
「今日はみんなにお知らせがあるぞ。」
一気に教室がザワつく。
「転入生が来るんだ。」
みんなの声が更に大きくなる。
「じゃ、入ってくれ。」
教室のドアが開く。
見ると、ひとりの女の子がいた。
髪は長くてサラサラで、もものピンをしていた。
かわいい…モデルさん?
わたしも目を奪われた。他の子も、特に男子がその子に心を奪われていた。
その子が先生のところへ行くと、教壇に立った。
「自己紹介してくれ。」
先生がいう。
みんな興味深々でその子を見る。
「はじめまして、桃原小学校から転校してきました、後藤 桃音です。」
あれ?桃音…?どこかで聞いた気がする名前、?
「よろしくお願いします。」
ペコリとすると、みんなから歓声が上がった。
「桃音ちゃんの席は…そうだな。ももちゃんの前にすわってくれ。」
先生がいうと、桃音ちゃんは大きな目を見開いた。
そして、わたしたちの方へ来た。
間近で見ると、更にかわいかった。
そして、今、急に思い出した。
桃音ちゃんは、ももちゃんのいとこの子だ、ということを。
だからさっき先生がももちゃんの前といったとき驚いていたんだ。
ももちゃんを見てみると、ビックリしていた。
そりゃそうだろう、偶然、いとこが転校してきて、前の席なんて。
それに、ももちゃんは桃音ちゃんのことばかり話すし、大好きといっていた。
だから、ももちゃんはどれだけ嬉しいだろうか。



