3人の少女に花束を


 5

「和葉ちゃん、典くん、起きる時間よ〜」
 お母さんの呼ぶ声で、目が覚めた。
 お母さん、こと桃子さんに引き取られて、もうすぐ1週間。
 桃子さんは凄い優しくて、穏やかな人で、本当のお母さんとは大違い。
 弟の典も、わたしもすっかり懐いている。

 リビングに行くと、朝ごはんが用意されていた。
 そして、エプロン姿のお母さんがいた。
「おはよう、お母さん…」わたしがいうと、お母さんが返事した。
「おはよう。よく寝れた?」
「うん。えっとね、夢も見て…」
 といいかけたところで、典がやってきた。
「典くんおはよ。」
「おはよ〜お母さん、お姉ちゃん。」
「典おはよ。アンタも夢見た?わたしはね、見たんだけど…」
 話し終えると、典がいった。
「へー変な夢。」
「でしょ?おかしいよね。」
 典と喋っていると、「もう食べなきゃ冷めるよ!」とお母さんにいわれ、食べることに。

 食べおわり、学校に行く準備をして、家を出た。

 学校に着くと、ももちゃんがもう来ていた。
 なんと、席替えで隣になれたのだ。
「和葉ちゃんおはよー。」
 ももちゃんがいう。
「ももちゃんおはよう!」
 わたしがいう。
 ああ、なんて幸せなんだろう!友だちと隣なんて…!
「ねえ、知ってる?今日転入生が来るんだって!」ももちゃんがワクワクしていう。
「えっそうなの?男の子?女の子?」
 わたしが興味深々できく。
「女の子らしい!気が合う子だといいな〜」
 ももちゃんがこたえる。
「へー確かに!席空いてるとこって、ももちゃんの前かな?」
 ももちゃんの前の席を見ると、前転校しちゃった子の席がある。
 きっとそこだろう。

 先生が入ってきた。
「今日はみんなにお知らせがあるぞ。」
 一気に教室がザワつく。
「転入生が来るんだ。」
 みんなの声が更に大きくなる。
「じゃ、入ってくれ。」
 教室のドアが開く。
 見ると、ひとりの女の子がいた。
 髪は長くてサラサラで、もものピンをしていた。
 かわいい…モデルさん?
 わたしも目を奪われた。他の子も、特に男子がその子に心を奪われていた。
 その子が先生のところへ行くと、教壇に立った。
「自己紹介してくれ。」
 先生がいう。
 みんな興味深々でその子を見る。
「はじめまして、桃原小学校から転校してきました、後藤 桃音です。」
 あれ?桃音…?どこかで聞いた気がする名前、?
「よろしくお願いします。」
 ペコリとすると、みんなから歓声が上がった。
「桃音ちゃんの席は…そうだな。ももちゃんの前にすわってくれ。」
 先生がいうと、桃音ちゃんは大きな目を見開いた。
 そして、わたしたちの方へ来た。
 間近で見ると、更にかわいかった。
 そして、今、急に思い出した。
 桃音ちゃんは、ももちゃんのいとこの子だ、ということを。
 だからさっき先生がももちゃんの前といったとき驚いていたんだ。
 ももちゃんを見てみると、ビックリしていた。
 そりゃそうだろう、偶然、いとこが転校してきて、前の席なんて。
 それに、ももちゃんは桃音ちゃんのことばかり話すし、大好きといっていた。
 だから、ももちゃんはどれだけ嬉しいだろうか。