─────サァァッ……
春風が、桜の花びらを揺らして遊ぶ。
そんな、乱舞する桜吹雪の中──…
「……あ……」
聞こえてきたのは……
「入部お願いしまーす!!」
「どうぞー!」
───…窓の、外。
「テニス部をよろしくお願いしまーす♪」
「吹奏楽なんてどうですかー?」
───…そう。
「───あー!♪
今年もやってるねぇ!!
新入生へのビラ配りっ!」
ナナも同じく窓から身を乗り出して、大きく声を上げた。
「………うん……」
色んな部活からビラを貰い、キャーキャー騒いでいる新入生達が目に入る。
「………懐かしいな……」
二年前はあの中にいて、
一年前はあの中にいるぶんちゃんを探していた。
………でも───……
「────…もう、いないよ?
………高山さんは。」
「───…………
そう……だね………」
ナナの現実の声に胸がズキズキする。
───もう、いない。
いないんだ。
だから探す必要もないんだ……。
「……元気……かなぁ……?」
「……彩……」
今頃は東京行って、
夢にまで見た大学生になってるんだろうな。
まだ慣れてないかな。
そっちでの生活に戸惑ったりしてるかな?
ちゃんとご飯作って食べてるのかな……。
………もう──…
新しい恋……
してるかな──……?
意外にちゃっかり彼女作ってたりなんかしてね。
……なんて。
まだ無意識にあなたの事が思い浮かんできちゃうけど。
でも、応援している気持ちはずっと変わらない。
ちっとも、変わってなんかないよ──……。
……今年もまた新入生歓迎会が始まる。
何もかもが懐かしい気持ちにさせて、まだ胸が痛むけれど。
少しずつ、少しずつ。
ゆっくりでいいから、
優しい痛みに変わればいいな──…。



