「───…お母さん。」
「なぁに?」
「───あたし…
好きな人が出来たよ。」
「好きな人?」
「───…うん…。
すごく…好きな人……」
そこまで言って、みるみるうちに赤くなっていく頬を隠すように器を手に取るあたし。
「…───まぁ…。
それってつまり…」
「…」
「────朝岡さんね。」
そう言って、分かりきったようにあたしに笑いかけた。
「……ん…」
うつ向き加減で答えるあたしに、お母さんは“やっぱりね”って楽しそうに頷く。
「……朝岡さんは素敵な方ねぇ。
いつも礼儀正しいし、しっかりしてるし。
何よりあの爽やかな笑顔はお母さんの好みだわぁ~♪
は~…お母さんもあともう少し若かったらなぁ……」
「───母さん!?!?
黙って聞いてりゃその朝岡って男は一体誰なんだ!?」
「やぁっっだお父さんったら話聞いてなかったの?
彩とあたしの好きな人よぉ~♪すーっごい素敵な殿方なんだから!
ねっ、彩っ♪」
「……ちょっ…!!!!
妻も娘も虜にするやつなんか絶対嫌だぞ!!」
「ちょっともう~っ…!!
お父さんもお母さんもやめてよ、恥ずかしい……」
────…家族がいることが嬉しい。
帰る場所があるのが嬉しい。
こうやって、一緒に笑いあえる空間が心地いい。
いつも一人で食べてた冷たいご飯が、家族がいるだけで何故か温かくなる。
何も言わなくても、無償の愛で助けてくれる。
家族って、そういう存在。
遠く離れていても、“家族”っていう繋がりは絶対に消えない。
いつでも温かい笑顔で迎えてくれるこの場所は、あたしの原点です。
あたしは、お父さんとお母さんの娘に生まれて良かった。
あなた達の子どもとして生まれて来たことを誇りに思うから。
…───ずっと、ずっと。
あたしは、お父さんとお母さんが大好きです。
いつか、あたしが二人の手を離れて結婚する日が来るのなら。
いつの日か、二人みたいな夫婦になりたいなって本気でそう思ってるよ。
本当に、この世にあたしを生んで育ててくれてありがとう。
───大好きだよ…。



