「───…朝岡さん…」
どうして?
どうしてここにいるの?
粉雪が舞う冬の幻想的な雰囲気の中に佇むあなたに、もはや違和感さえ湧かない。
あまりにもその景色に溶け込んでいるかのようで。
「───…何か…
やっぱり心配でさ…
気が付いたら足が勝手に……みたいな…」
ははっと笑うあなたの笑顔に、胸がキュウッと小さく縮む。
いつからここで待ってくれていたんだろう?
肩に積もる雪が、その答えを物語っている。
「───…風邪…
引いちゃうよ…」
────…ポンッポンッ…
背伸びしてあなたの肩に手を伸ばし、積もっている雪を払う。
その手首を朝岡さんが止めるように握り
「───…どう…やった…?」
真っ直ぐに揺るがない瞳であたしを見つめた。
…───カタカタ……
初めてかもしれない。
こんな風に小さく怯えるように震える朝岡さんの手は。
「───…だ…
大丈夫だった…」
笑顔で何もなかったと伝えるはずが、予想外。
朝岡さんの震えが伝わったのか、泣くのを堪えたあまり、あたしまで声が震えてしまった。
「…ほん…まに…?」
「…───ほんとだよ…
あたし何もなかった…
だ…大丈夫…だった───…」
緊張の糸が緩むってこういう事かな。
────…ギュッ…
朝岡さんに抱き締められ、力強い腕に包み込まれた瞬間。
「…っ…
……良かっ───…~~~~っ……」
────…ツー……
朝岡さんの声を聞き、あたしは頬に生温かい涙の雫が流れるのを感じた。
奈落の深い闇の底に落ちて、真っ暗で今まで気付かなかったけど。
暗闇の中でも、少し歩けばあたしの周りには誰かがいることが分かった。
その人は誰でもない、あなたや仲間、家族。
頼っていいんだよ。
もっと甘えていいんだよ。
たとえあたしが道が分からなくて泣いていても、誰かが指を差して行き先を教えてくれる。
誰かが火を灯らせて道を照らしてくれるんだってこと。
…───あたし、やっと気付けたよ。



