────…カチャ…
「お待たせしました。
どうぞお掛け下さい。」
────…ドクン
ドクン────…
張り裂けそうな心臓をグッと押さえ、あたしは目の前の丸椅子に腰掛けた。
「───…ごめんなさいね、お待たせして。」
目の前には年配の女医がカルテにサラサラとペンを滑らせ、あたしに笑顔を向けた。
…その何とも言えない微笑みが、ますますあたしの緊張を煽る不安材料に化す。
“一体その微笑みは何を示しているのか”、と。
「検査薬は試さなかったんですね?」
「…はい…」
自分ではしなかった。
有り得ないとは思うけど、もし陽性反応が出た場合…
ここに来るまでに“母性が生まれでもしたら…”と思うと怖くて出来なかった。
……そんな隙を与えたくないのが本音だった。
「───…じゃあ生理もまだ来てないのね?」
「はい…」
この時、既に生理は予定より何日か遅れていた。
クラスメイト全員からのいじめを受けるようになってからは、不順になることが度々あった。
これもいずれキチンと見てもらわなきゃ…と思っていた事。
─────…カリ…
先生はまたあたしの言葉を聞いてカルテにペンを走らせ、じっとあたしを見つめた。
「───…妊娠はしてませんよ。
性病も、結果を見る限り問題ないでしょう。」
──────…
「───…ほ…んとですか…?」
「───えぇ。
あともう数日したら生理も来ると思いますよ。」
「───…っ…」
「ただ、生理が不順になるのは強いストレスが原因だと思うから…
あまり無理しないように。」
「…は…はい…
あっ…ありがとう…っ
ありがとうございますっ───…!」
━━━━━バタン!
結果を聞き、あたしは診察室から飛び出す。
「───彩!
どうだっ───…」
─────ギュッ…
「…彩…?」
「…って…
あたし…
何にもないって───…~~~~っ……っ………」
あたしは
堪えきれずマリアに抱き付いて泣いていた。



