言葉が欲しい時もあるけど、今はいらない。





そばにいてくれるだけでいい。




温もりを感じれるならそれでいい。






他に何もいらない。









「───…彩…」








掠れた低い声。









「───…好きや…




めっちゃ好き……」







「…っ…」










唇と唇が触れる瞬間、胸に電気が走る。





こんな甘酸っぱい胸の高鳴りを感じられるなんて思いもしなかった。





……不思議。





朝岡さんに触れられても、全く不快にならない。






ずっと一緒だったもんね。





この四年間、ずっと信じて見守って来てくれたのは朝岡さんだったもんね。






…───こんな風に。





心に深く根付いた絆の事を、“信頼”って言うのかな?









「……朝…岡さん…?」




「ん~?」






「───…もう…




もう一人ぼっちにしないでね…」







─────キュッ。






自分で言っておきながらハンパなく恥ずかしくて、朝岡さんの黒いTシャツをギュッと握りしめる。





初めは驚いた顔をしていた朝岡さんだけれど、







「───…ふっ…」






「何で笑うの…」








何か伝わって無さげ…。





一応、あたしなりに甘えてるんだけどなぁ…。





甘え下手でヘコむ…。






自己嫌悪でうつ向くあたしに







「彩?」





「ん?」







「……俺がいつ彩を一人ぼっちになんかしたっけ?」






「…え…」







「俺は彩を一人ぼっちにしたこと全くないんやけど?」







「───…」







陽だまりの様に微笑む朝岡さんを見て気付かされた。






……そうだ。




そうだった。





あたしは一人だったんじゃない。





自分から“一人になる事”を望んでただけ。






勘違いも甚だしい。






「…ごめん…」





「いいよ、もう。



でもこれからは困ったらおいで。な?」





「…うん…」










…生きたいな。





あたしこれからも生きていきたい。






“乗り越える”なんてたいそうな言い方じゃなくていいから。






…───ただ。





ただ毎日をゆっくりとでも生きていけたら







いつかその足跡が






あたしの歩んで来た“道”になるから