…───まるであたしの存在を確かめるかのように。
強い力であたしを抱き締めてくる朝岡さんの肩が、小刻みに震えていた。
「───…ごめんな…
彩が苦しんでる時に助けてあげられへんくてごめんな───…っ…」
───泣いてる…。
泣いてくれてるの……?
あたしが生きてるから泣いてくれてるの……?
───…ツー…
……怖かった。
怖かったよ。
急に殴られて拉致された事。
無数の手があたしに向かって伸びてきた事。
失くなった自由。
クスリ無理矢理吸わされて、何にも抵抗出来なくされた事。
愛のない一方的な行為中、ずっと首に当てられたままのナイフ。
獲物を捕らえるかのように構えられる動画と写メ。
捨てられた真っ暗な森の中、雪と寒さに凍えながら裸で歩き回った事。
泣きながら、数時間ずっと一人っきりで彷惶い続けた。
「───…った…
ずっと朝岡さんに会いたかった───…!」
───会いたくて。
ただ、あなたに会いたくて。
その為には歩かなきゃいけなかった。
生きなきゃいけなかった。
あなたがいる場所に辿り着くまでは。
「───…彩っ……」
名前を呼んでくれるだけでいいの。
抱き締めてもらえるだけでいいの。
あの時
死の淵を見たあたしには
それすら
奇跡になるの
「──…怪我は…?」
「も…もう治った…」
そう言ってるのに、朝岡さんはあたしをまるで信用してないのか
────ふわっ…
今度は全身で優しくあたしを包み込む。
朝岡さんの香り。
あたしを簡単にスッポリ包み込んでしまう胸板。
…───そこからは
────…トクン…
トクン…
朝岡さんの今を生きてる証が聞こえてきた。
「───…生きてる…」
「……彩も生きてるよ…。
めっちゃあったかい……」
…───あぁ。
ここだったんだね。
此処だったんだ。
あたしが探し求めていた場所。
やっと、辿り着けた。



