全速力って言わんばかりの早さに、最近の運動不足がたたったのかあたしは若干ヘロヘロ。
「……上がり?」
「うっ、うん…」
「…───お茶。
先に入れとくからごゆっくり。」
────…ポンッ。
モタモタとブーツを脱いでるあたしの頭を撫でて、キッチンに消えていく朝岡さん。
「……」
“普段通り”、出来てる…よね…?
こうしてれば…
前と変わらないのにな…
───このまま…
ウソを貫き通せば、今みたいに“普通”でいられるかな?
前みたいにわだかまりなく、無邪気に笑い合えるかな…?
あたしさえ、何も言わなければ。
我慢さえすれば…
もう朝岡さんを悲しませずにすむかな……?
────カチャ…
「彩?」
湯気が上がったマグカップ二つを持っている朝岡さんが、不思議そうにあたしを見つめた。
「あ、ごめ…」
「いや…ミルクティーで良かったっけ?」
「うん…ありがと…」
もう既にキッチンでお茶を入れ終わっている朝岡さんに出遅れ、パタパタと小走りでリビングに急ぐ。
────…ファサッ…
羽織っている真っ白なコートを脱ぎ、ソファに腰掛ければ
「───何か…
全然見てないうちに彩痩せたな…」
「…え…」
「──…何かあった…?」
“隠せない”、と思った。
朝岡さんは、あたしが思っている以上にあたしを見てくれている人だから。
───もう…
ずっと昔から…。
「───…最近…
連絡全くつけへんかったよな…?
もしかしてそれと何か関係あるんか……?」
「…」
朝岡さんにウソを貫き通すなんて不可能だ。
そもそもあたしは何の為にここに来た?
好きな人に、ウソを貫き通す為にここに来たっけ?
────ちがうでしょ。
「───…あ…たし…
話しに……来た…」
背中を向ける為じゃないでしょう。
嘘で未来を塗り潰す為じゃないでしょう。
強がって、意地張って笑う為でもないでしょう?
「──あ…たし…」
信じてるから
ここに来たんだよ



