「…──黙ってるんやったら、イエスと見なして連れてくで!」
「え?あ…っ!」
━━━━━グイッ!
返事をする間もなく、朝岡さんはあたしの手を取り、勢い良く廊下を走っていく。
────…ヒュッ
頬を切る風が、さっきよりも早く駆けていく。
あたしは引っ張られながらも、その早さに必死になって付いていく。
「……あっ…さおかさん…!」
「ん~?」
「はっ、早いっ……!
早いよっ……!」
「……いいやん♪
風になったみたいで、さ♪」
そう笑い、風を切って走っているあなたを見てると涙が引っ込んだ。
まだ…
まだそんな風にあたしに笑ってくれるんだね…?
「───ちょっとぉぉ!
純どこ行くの~!!!!
練習するって言い出したの純じゃんかぁぁぁあ~!バカぁぁぁ!」
「───…あのね、あんたちょっとは空気読むって事覚えなさいね。」
「はぁっ!?!?意味分からんし!どういう事!?」
「…ま、壱にはまだ分からない大人な事情ってとこだよ。」
「ゴローちゃんまで!!!!
何!?だからどういう事!?」
「───…猿はまだまだ子供ねぇ…。
━━━━純~!!
今日はもう戻って来なくていいからね~!」
「えぇぇえ!?!?何でぇ!?」
「───純~!達者でな~」
「えっ、ゴローちゃんまで!?!?何、何がどうなってるの!?!?」
背後からエールを送るマリアとゴローちゃん、そして一人イマイチ訳が分かっていないいっちゃんの声。
────…チラッ…
あたしが振り向くと
「────…」
マリアがわざわざ廊下に出て、笑顔で手を振ってくれているのが見えた。
“頑張って”
「───マリ…ア…っ」
その笑顔に、
その小さなエールに
「───ありがとう…っ…」
一緒に苦しみ、
一緒に泣いてくれたからこその想いに
あたしは計り知れない大きな思いを貰い抱き、マリアにそう呟いた。
───数分後…。
「どうぞ。」
「ありがと…」
あたし達はほとんど会話を交わさず、朝岡さんの家に辿り着いた。



