…───その日は日記にそう書き残しているくらいで、これ以上記憶を辿る術がない。
……ただ
“一人にさせられないから”とマリアが自分の家に身を寄せるように言ってくれて。
あたしはそのままマリアの家に身を寄せた。
…───さんざん泣いて泣き疲れた後。
「───…」
いつの間にか眠ってしまい、腫れて重くなった瞼をゆっくり開ければ
「……うん……
あたしも少し聞いただけなんだけど……
ちょっと事情が──…で……
しばらく………──────みたい…。」
─────…。
マリアがケータイ片手に喋っている背中がぼんやり視界に映る。
「……うん。
だから落ち着いたら彩から連絡くると思う。」
────マリア……。
きっと喋ってる相手は…
「……朝岡……さん…?」
ベッドから起き上がり、電話が終わったマリアの後ろ姿に呟けば
「あ、彩。起きた?」
振り向いてあたしの頭を撫でてくる。
「……今のって…」
「……あぁ、純から。
彩と連絡繋がらないからって心配してたみたい。」
「……」
「……急に実家に帰らなきゃいけない用事が出来たみたいって言っといた。
咄嗟に思いついたのがこれくらいで……
何かうまい理由思い浮かばなくてごめんね。」
「……マリア…」
「……純には心苦しいけど理由が理由だし……
彩の心の整理がつくまではいいんじゃないかなって…。
純もきっと分かってくれるよ。」
「……」
「……ね?」
─────ツー…
無言で涙を流すあたしを、マリアは複雑な表情で見つめていた。
「……ごめん…っ…」
「…ううん。」
自分で嘘もついてあげられない。
ましてや今はまだ本当の事を話す勇気もない。
でも
「……もう少し……
もう少ししたらちゃんと朝岡さんにも話すから……」
「…ん…」
自分に言っていたのか
マリアに言っていたのか
朝岡さんに言っていたのか
今はもう
それすらも分からない。



