もしあの時マリアがあたしを引き止めてくれなかったら。
もしあの時こんな風に怒鳴って一緒に泣いてくれる人がいなかったら。
…───あたしはどうなっていたかと思うとゾッとする。
多分あのままマリアが来てくれなかったら、あたしは……
きっとこの世にいなかった。
ここに存在していることもなかった。
……だからあたしは今も彼女には頭が上がらない。
一緒に泣いてくれた。
一緒に怒ってくれた。
“悪くないよ”って支えてくれた。
必要だって
生きてて欲しいって
……言ってくれた
─────キュッ…
「……よしっ、と」
…───数分後。
あたしの手首には、マリアがぶっきらぼうに巻いてくれた包帯が巻かれていた。
グルッグル巻きの不器用かつ豪快な巻き方がいかにも彼女らしい。
「……ありがと…」
「いいよ。でももう絶対やっちゃダメだからね。」
「…うん…」
救急箱を片付けるマリアの背中を見つめ、胸がじんわり温かくなった。
……ごめんね。
いつも助けてもらってばっかりでごめんね。
あたしもいつかマリアみたいな優しい人になりたいな……。
「……」
そっと包帯を握り締め、緩む視界を腕で拭う。
……と、その時。
────ヴーヴー……
床に放りっぱなしのケータイが突然バイブ音を鳴らし、肩がビクつく。
……誰……
「……電話鳴ってる?」
マリアもそれに気付いたのか、慌てたように小走りであたしに近付き
─────カチッ。
拾おうともしないあたしの代わりにケータイを開く。
「───…あ…」
「……え?」
マリアがディスプレイを見て困ったような表情をするから、あたしまで不安になり
「……なに…?」
あたしも恐る恐るディスプレイを見つめた。
そこには───…
着信;
朝岡さん
────…ドクン…
「───…朝…岡さん…」



