────…警…察…
言葉の渦がグルグルと回り、視界までもを覆い尽くす。
───…警察で……
何話すの…?
今遭ったことを話すの?
くわ…しく……
“警察なんかにチクって見ろ、
お前どうなるか分かってんな?”
“写真。
バラまくぞ”
「────…ひっ…!」
━━━━━ガタンっ!
「…彩?」
「────いやだ…
いやだぁぁぁあ…!」
「彩!?!?!?」
───フラッシュバック。
言葉で言えば簡単だろう。
でも実際は言葉で片付けられる程、簡単なもんじゃない。
「……いや……
いやだ……」
急にあの瞬間に引っ張られ、今まさに起こっているように過去に引き戻される。
何度も何度も体験するようなこの感覚は───…
「……うっ…
うっ……ひっく……」
自分にしか分からない。
「……彩……っ
ごめん……ごめんね、あたし……」
腰が抜けたように後退りするあたしに、マリアはオロオロしながら近付いてくる。
「……む…無理…
無理だよ……
あたしとてもじゃないけど詳しくなんて話せない……」
「…」
「そ、それに写真いっぱい撮られて───…
警察にチクったらバラすって………
あ……あたし……あたし……」
「───…彩…」
「───…行きたくない…
…警察なんか…
警察なんか行きたくないっ───…!」
泣き寝入りになるって分かってるよ。
でもあたし、他人にこんな話す勇気なんかない。
きっと一生話す事なんかない。
話す事なんか出来ない。
───…誰にも。
フラフラと家から出ていこうとするあたしを
「…彩…待って…」
マリアは引き止めたけど
「───ごめん……。
一人になりたい……」
────…パタン…。
あたしは扉を閉めて拒絶した。
もう
何もかもどうでもよかったから。



