寝ぼけまなこでトーストをかじり、顔を洗って歯磨きを終える。
────ふわっ……。
次に白いドレッサーに座り、アイロンで丁寧に髪を巻き始めた。
「──…長くなったな……。」
───…この時期になればいつも思い出す。
二年前にバッサリ髪を切った自分を。
何か新しい事に期待していた自分を───……。
……でも今はもう、
ほぼ元通りに伸びきったって感じ。
……何だかんだいいつつ、あたしにはロングが一番しっくり来るのかもしれないな。
………なんて、ね。
鏡に映る自分に微笑み、時計を見てはメイクする手を早める。
ファンデーションとマスカラを重ね、光に映えるキラキラのシャドーを瞼にオン。
ふわりとチークを入れ、グロスを唇に塗れば──…
「───…行ってきまーす!!」
──…いつもの、自分。
ふわふわと髪を揺らして。
春の季節が存分に溢れる道へと飛び出す。
青く澄み渡った空に、
ピンクの花びらの情景が美しい。
「ん~っ♪」
久しぶりに、春の空を見上げた。
……何も、変わらない。
幾度となく巡ってくる、
この春の情景は、何も。
変わってはいない。
ただ、少し変わったのは──……
いつも一緒に歩いていたこの道に、あなたはもういないと言うこと。
「────……」
そう思えば、少し寂しい。
あなたがいなくなって、初めての春。
あなたを見送って、新しく迎えた季節。
あなたが卒業していなくなった学校。
あなたの、最後に見た笑顔──……
……もう………
………いない──……
─────キュッ……。
……思い出せば、心が少し痛む。
でも───……
ぶんちゃん?
……あたしね、
もう一人でこの道を歩けるようになったんだよ───……。



