…ちょっと待って?
クリスマス一緒に過ごすかどうか、誘われてもないあたしって…。
甘い妄想する以前の問題なんじゃ…
……え、やだやだ。
これって完全に勘違い、
もしくはあたしが勝手に浮かれてる系?
…いやいや朝岡さんに限ってそんな事ないよね!!
“一緒に過ごそ♪”って自分で誘っちゃうのもアリだけど、ここは誘われるのを待つ受け身の体勢を貫こう。
うんうん。
朝岡さんもきっとそのうち誘ってくれるよね♪
……なんて余裕ぶっこいてた数日。
朝岡さんはクリスマスの話題にかすりすらせず。
……さらに数日。
「……放置プレイ…?」
「えぇっ!?まなちゃん今何て!?!?」
「…あぁいや独り言。気にしないで。」
「いやいやいや!気にするって!」
──…Heaven、更衣室。
あたしは“愛美”として出勤しつつ、笑えない独り言を呟くほどヤバイ人と化していた。
だって。
「…ねぇねぇ!!
今年のクリスマスはどうしちゃう予定?」
「そりゃ店終わったらソッコー彼氏んとこ行っちゃう予定ー♪」
「えーいいなぁ!!!あたし当日無理だから次の日にしたよー」
……なーんて
どこ行ってもクリスマスの話が耳に入ってくるんだもん。
いいなぁー…。
あたしも仕事終わったら会いに行っていいかなぁ…。
はぁっと溜め息を連れ、あたしは悩みながらもドレスアップ。
気合い入れる為に巻いた髪をアップにし、彩から愛美へとスイッチを切り替える。
「───よしっ!
今日もバンバン指名と売り上げ頂いちゃいますか!!!!」
パリッと気合いを入れ、あたしは完全に仕事モードON。
恋愛は恋愛、仕事は仕事。
彩は彩、愛美は愛美。
───…切り替えは大事。
────カツン…
高いヒールを鳴らし、ホールに急ぐ。
もうそこにはさっきまでの彩の面影はどこにもなく───…
今夜もあたしはHeavenのナンバー2、愛美として戦場に降り立つ。
溜め息を深呼吸に変え、今まさに歩き出そうとした瞬間
「………愛美。
大事な話がある。
ちょっと来てくれないか」
「……店長?」



