いつか……
いつか許してくれる時が来たら──…
二人が共有している“傷”に、あたしも触れて支えられたらいいな…
……その前に、みんながあたしの傷を受け止めてくれてるみたいに、あたしももっと強くならなきゃ。
ギュッとマリアに抱き付くと、あたしの髪にマリアの手が伸びた。
───まるで戸惑うかのように。
「───…あたしこーゆうの慣れてないから困るって…。
純にやってもらいなよ…」
────フワ…
ぎこちない手付きで頭を撫でてくるマリアに、あたしは思わず笑ってしまった。
「いつも殴る専門だもんねー♪」
「そうよー。時には鞭も蝋燭も扱うわよー。ビシバシと。」
「あっはは!どこぞのSM嬢~」
「天職よ天職。」
悪ノリしてくるマリアについつい吹き出すあたし。
「───ねぇ、マリア…
紅のみんなって温かいね。」
ポツリと口から零れた心の本音。
マキみたいに血が通ってない人間の冷たさを知っているからこそ、なのかなぁ…。
マリアに抱き締められてると、心底人の温かさが身に染みるの。
「───…当たり前よ。
紅って、そんじょそこらのバンドじゃないもの。」
「…うん」
「───…彩…」
「ん?」
「……適度に頑張ろう、ね。
みんな離れてても、ちゃんと彩の事思ってるから。」
「───…うん…」
心の傷っていつ癒えるか分からないし
不透明で目に見えなくて。
誰もが違う種類の傷抱えてるから統一した治療法なんてなくて。
確実も存在しないし、
確定的な治療薬すらない。
治るっていう確固たる根拠もない。
だから人間ってますます迷うし悩む生き物なんだよね。
でもそんな時。
あたしはこの温もりと絆を思い出したい。
これも目に見えないものだけど、確かなものだから。
「───…じゃあ行くね。」
「うん、気をつけてね。
今日はありがとう!」
手を振ってバイクに乗り、エンジンの音と煙と共に帰っていくマリアの背中を見送った。
「……ありがとう…」
必然とも偶然とも言えるみんなとの出逢いに感謝しながら。



