慌てて屈み込み、床に散らばる私物を拾うあたしの背中には
────クスクス…
この行動のどこに笑う要素があるのか分からないけれと。
さぞあたしの行動が可笑しいのか、滑稽なのか。
はたまた自分が優位に立った充足感からなのか。
どこまで利己的なんだろ。
重い溜め息も程々に、最後の落とし物に手を伸ばした時だった。
「何これぇ~~!?ダッサ!」
─────バッ!
マキがあたしより先に手を伸ばし、“それ”をつまみ上げたのは。
───シフォンケーキ…
「マジ何これ?失敗作?」
プラプラと宙に揺らし、
まるで汚物でも持つかのように親指と人差し指で摘まみ、ジロジロと中身を見つめるマキ。
「自分一人で食べるからってラッピングで気分上げてるつもりぃ?
超寂しー人間だよねー!!」
アハハと甲高く笑い、
クラスメートまでを笑いに巻き込むマキに、
────カァァッ…!
辱しめと恥ずかしさで、あたしの頭にカッと血が昇る。
───寂しいのはどっちよ。
そんな風にしか連想出来ないあんた達の方が、よっぽど寂しい人間よ。
ギュッと唇を噛み締め、
爪が食い込むほど拳を強く握り───…
「────返して。」
あたしは目に怒りの炎を燃やしながら、静かに片手を差し出した。
マキはあたしの気迫に怯まないよう、一瞬ジロリと睨み付け
「───いいわよ。
………拾えば?」
─────ポトッ!
マキは自分のブーツの真横にシフォンケーキを落とした。
「──…っ」
“落とされた”事ももちろん信じ難かったけど
「……ほら、早く拾いなさいよ。」
「────…」
“マキに跪くような形”で拾わされる屈辱が、人として本当に信じられなかった。
ここまでして弱者を追い詰めたいか?
ここまでして自分が一番強いと印象付けたいか?
“マキ”という人間の本質を見抜けずにいた、かつての自分さえも。
───…今となっては、
何だか恥ずかしくなってくる。
「………」
あたしは頭を真っ白にして、なるべく無表情でマキに屈んだ。



