────…カチャ…。
更衣室のロッカーから、
一限目で行われる“生化学・栄養学”の教科書を取り出していた時だった。
「───おっはよー!
成績優秀でイイコ可愛い子ブリッコの桜井さん♪」
「……」
ワザとみんなに聞こえるような大声で更衣室に入ってくるのはクラスの中心格。
「何言ってんのー?
心配しなくても、マキちゃんの方が何十倍も可愛いってばぁ~」
「え~でもぉ、あたしあの人みたいに頭良くないしぃー。」
「んなことないよぉ!!
頭良い女って言ってもただカンニング上手いだけだよ~」
「あはは!それ超ウッケる~!!」
─────……。
“長いものには巻かれろ”ってこの事か。
クラスの子達も、寄ってたかってマキの言う事に目の色変えて飛び付いて行く。
マキを上げて上げて、自分に被害が来ないように。
“ターゲットは自分”にならないように。
あたしはその滑降な材料に過ぎない。
────くっだらない。
低級、下級、低レベル。
あたしは特に反応もせず、取り巻いてる群れを無視して歩き出した。
────が…
「ちょっと待ちなさいよ。」
────グイッ!
「──いたっ…!!」
なにっ…
突然髪を引っ張られ、あたしは走る激痛に頭を押さえた。
「またマキと同じ系の服に戻ってる~!!やめてくんない!?真似ッコ!」
「なっ…、」
────…現にマキが言うことに間違いはない。
あたしは朝岡さんと想いが通じ合ってから、元の姫っぽい服に戻っていた。
だって朝岡さんがこういう服が好きかは知らないけど、あたしはあたしだ。
“今日はどんな服着たいか”なんてあたしが決める自由だ。
別に全く同じ服を着てるワケでもないし、当然マキの真似なんか絶対してない。
「───…別にそんなつもりなんかないよ。」
「はぁっ!?!?」
「だから真似してるつもりなんかない。あんたの服の方が可愛いと思うよ。」
「何それ、僻みのつもり!?!?」
━━━━━ドンッ!
「…っ」
────…バラバラ…
マキに強く肩を押された際にバックが落ち、中身が床に散乱した。



