────……
……─────
その後……。
「……はぁっ…。」
あたしは人の流れで溢れる校門の前に、一人立ち尽くしていた。
……行きたくないなぁ。
癒しの後に来る嫌な時間の反動がダルくて堪らない。
さっき乗っていた、いつもは大嫌いなはずの混み合う満員電車。
“大丈夫?”
人がギュウギュウの中、朝岡さんに守るように引き寄せられ、あたしは不謹慎ながら満員電車が少し好きになれた気がした。
でも────…
すぐそばのコンビニで心配するあなたと別れた後、無性に寂しさと不安が入り乱れてくる。
“もう一人じゃない”
そう強い意志を持っていても、やっぱり嫌なもんは嫌だ。
「…頑張ろ…」
ここでいつまでも突っ立っててもしょうがない。
あたしはグッと決心を固め、流れる人波に紛れた。
「おはよー。」
「おはよう♪」
ごったがいする下足室で、今日も当たり前に交わされる朝の挨拶。
「……」
あたしだけが異質な存在のように感じるこの瞬間が大嫌いだ。
でも大丈夫。
こんなのいつもの事。
ホントは慣れちゃいけないけど、もう慣れっこだ。
────…パタン。
サッと下足室を後にし、
「…えっと、一限の講義室って今日はどこだっけな……」
あたしは時間割り表を取り出そうと、バックに手を入れた。
────…その時。
「────あ゛っ!!!!」
……思わず、声を上げてしまった。
「最悪っ…!!シフォンケーキ渡し忘れた……!!!!」
…そう。
バックから寂しそうに顔を出したのは、今朝一生懸命作ったシフォンケーキだった。
「…うわぁ~…もう何でやっちまうかな……」
初めての歩いた道、舞い戻って来た約束、ささやかな幸せを感じた満員電車ですっかり浮かれていた、と言っても過言ではない。
あたしとしたことが何て大ミス。
「あぁぁ~……もう…」
あたしはショックを抱えながら、フラフラと一限の講義が行われる教室へ向かった。



