「───…そっ、そんなのっ…」
「ん?」
「…っ、」
背後から射す朝日が眩しくて、よけいに朝岡さんを直視出来ない。
────それでも
「───…あっ…、
朝岡さんしか見えてないよっ…」
─────キュッ…
顔が真っ赤なのを隠すように、あたしはそのまま朝岡さんの首筋に抱き付いた。
大好きな朝岡さんの香水の香りがふわりと漂い、今のあたしに妖艶に刺激される。
「───…好きやよ。」
艶っぽい声と、色気のある体。
……ずるい。
ほんとにずるい。
この人のフェロモンには抜群に弱いし、一撃でやられてしまう自信がある。
───男の人に欲情するってこういう事だろうか。
好きで欲しくてたまらない、なんて。
「…彩、」
「…ゃ、くすぐったい…っ」
首筋を唇で軽く触れてくるのが、くすぐったくて我慢出来ない。
「っ」
そんなあたしの耳に唇が到達すると、
「────…彩。
約束覚えてる?」
─────…え?
「……やく…そく…?」
突然の質問にポカンと口を開き、目をパチパチ。
「そう、俺とした約束。」
「…へ…」
し、失礼極まりないけど、一切頭に何も浮かんで来ない。
約束?
なんかしたっけ?
「・・・・・」
しばらく沈黙が続き、微妙な空気が二人に流れる。
うわぁ~…!!!!
きっ、気まずい~!!!!
どうしよう~!!!!!!
「……マジか。
じゃあこれ見ても思い出されへん?」
テンパるあたしの目の前に差し出されたのは
「───…C…D…?」
そう。
それは透明なケースに納まった、1枚のCDディスク。
「…これ…」
「……約束したやろ?
彩が作詞して、それを俺が歌うって約束。」
「────…あ…!!」
“俺が作った曲に、彩が言葉を綴って欲しい。
それを俺が歌いたい。”
“うん、約束♪”
───それは
二人が引き裂かれる直前に交わした約束。
もう叶わないと思っていた“夢のカタチ”だった。



