「───…さんむっ…!!」
─────ビュウッ!
暖房で温まっていた部屋とは歴然に違う外気の温度差。
─────キュッ。
ついブルブルと身を縮め、寒さに耐えきれず朝岡さんの腕に絡み付く。
「……いいねぇ、寒いの最高。」
「なんで~!?!?もう寒すぎて泣きそうだよ~」
「……いや。
いい具合に密着してくれてるから♪」
「…へ…」
「───…胸が。」
「~~~!?!?!?」
ぎゃぁぁぁあ!!!!!!
バッ!!と勢い良く腕から離れ、顔を真っ赤にして意味なく両手を上げる。
こっ、これじゃ自分から胸を押し当ててるようなもんじゃないか…!!
「あれ、そこ放しちゃう?せっかくいい感触に浸ってたのに。」
「もーっ!!!!!朝岡さんのエッチ!バカ!」
「はいはい、どうせ俺はエロですよ。」
くすくすと余裕で笑い、
冬の凍える朝でも凜とした姿勢で歩く朝岡さんは、やっぱり自分より遥かに大人だなぁと思う。
熱も下がり、ようやく本調子に戻った朝岡さんは、朝になるとあたしを迎えに来てくれるようになった。
────…“学校”。
“一人で嫌々行くなら、
二人で歩いていこう。”
嫌々行く学校までの道のりを、ほんの少しでも笑ってくれたらと。
朝岡さんが毎日繰り返される嫌な行事を、楽しくて待ち遠しい時間に変えてくれた。
「……ねぇ朝岡さん。」
「んー?」
「……朝岡さんって、体鍛えてる?」
あたしはさっき抱き付いてた腕をチラチラ見ながら尋ねた。
「……あー、うん。
体動かすのめっちゃ好きやもん。」
「…そ、そう…」
返って来た答えに、心の中でめっちゃ納得しちゃってる自分がいた。
───だって!!!!!
だってさっき絡んだ腕の筋肉ハンパなかった!!!
男らしいっていうか、
たくましい?
うわぁ~!!!!!
もう何て言ったらいいんだろ!?
……や、ヤバイ。
ちょっと腕だけでいいから筋肉拝見してみたいかも…。
「───何よ?
人をそんな目でチラチラ見てヤラしいねー、彩は。」
「───ちっ!!ちがっ!
違うし!!!!!」
あたしは平然を装いながら先を歩き出した。



