第31章 真と偽のジオラマ









「───ぶぇっくしゅ!」





「あはっ、まなちゃんのくしゃみおやじーっ!」





「…うるさいな」





けらけらあたしのくしゃみを笑う萌を、鼻を啜って横目で睨む。







「あんな寒空の中、ライブの立ち聞きしてるからよ。」





「………」





しまいには美月に痛い釘を刺され、あたしは口をつぐむ。






「……でも意外だなー!



愛美ちゃんも紅のファンだったなんてー!



言ってくれたらあたしライブのチケット取ってあげたのにー!!」





「…あは…」





…も、持ってたんだけどね。




ちょっと色々あって行けなかっただけで。






───…なーんて、やっぱり正直にカミングアウトは出来ず、華恋ちゃんに苦笑いを返す。






「そのまま風邪引かないように、今日はゆっくり休むんだよー!」





「うん、ありがと。」





あたしは送迎の車から降りる際、気遣ってくれる顔ぶれに手を降ってドアを閉めた。







───…学園祭に行ってから、多分2日が経った。





行く時にハプニングありまくりに加え、寒い中立ち聞きしていたのが身体に堪えたのか─…







「……っくしゅん!」






あたしはどうやら風邪を引いてしまったらしく、萌が言う“おやじっぽいくしゃみ”を何回も連発していた。






─────…カチャカチャ…





………キィ───…






「……ただいまー。」






開けても真っ暗な扉を開け、あたしは高いヒールを脱いで電気を付ける。





「……つっかれたー…」





着替えながら冷蔵庫からミネラルウォーターが入ったペットボトルを取り出し






────…パチン。






首に掛かっているネックレスを取り出し、日記の鍵を開けた。






────パラ……






“記念に”と、あたしは学園祭当日の日付に朝岡さんから貰ったチケットを貼り付けていた。






「…ただいま。」






これを見て、笑顔になれる自分がちょっぴり好きになっていた。






───…そんな、いつもと変わらない夜。





このままいつものようにお風呂に入って寝るっていうお決まりパターンだったのに。




ちょっと違うのは、風邪薬を飲むくらいだったのに。








────…ピンポーン。






そう。





全く予想していなかったインターホンが鳴ったんだ。