「──…じゃあ解答用紙を集めますね~。」
────…カラン…っ。
答案用紙に書き込む鉛筆の音が一斉に止み、あたしも顔を上げた。
………お、終わった…。
……テストも人生も。
────…ミーン…ミーン……。
遠くでセミの声が鳴り響く。
───夏、真っ盛り。
今年ももう夏休みが近づいて、あたしのクラスは受験一色に染まり始めた。
……もともと進学校でもあり、レベルが高い学校として知られるこの高校は、
やっぱり“進学”という考え方が基本中の基本で。
中でも、みんなエリート大学や国公立狙いが当たり前。
さらには、医者や弁護士などを目指す志が高い人が、当たり前のように多かった。
───そんな中……。
中学時代、
ここの学校を無理して受験し、運で受かったようなあたしにとって、みんなのエリート話とは全く疎遠で。
「………はぁっ……」
自分の進むべき道が分からず、ただ勉強する毎日なあたしにとって………
「ねーねー医大目指すんでしょっ??」
「うんっ!
このテストの結果響くし、次も超頑張らなきゃ♪」
「───………」
────いいなぁ……
自分が進む道しっかり決めてて……。
……あたしには……
………何にもない……。
────そう。
別に何も目指すものがないあたしにとって。
“夢”について語り合っている人が、羨ましくて仕方なかった。



