────…ギュッ…
あなたから初めて貰った遠回しな手紙を抱き締めた。
「───…朝岡さんらしい……手紙だね……」
───…不器用で、でもどこか優しくて…
「……~~~~っ」
この紙にあなたの優しさや気持ちが籠められていると思うと、こんな紙切れ一枚さえ尊く思う。
………気のせいかな?
いつも朝岡さんが付けていたあの香水の香りが、少し香る気がするのは……
───…香りは不思議だね。
だってこの香りを嗅ぐと、あなたの笑顔が勝手に瞼の裏に浮かんでくるんだよ。
───…ねぇ
あなたはまだあたしを覚えててくれたの?
あんな酷い事して振り払ったあたしをまだ───…
「───…ライブ……っ
行っていいの───……?」
───…引き裂かれた日から6ヶ月間
本当はね、ずっとずっと
片時もあなたのこと忘れたことなんかなかったよ。
その証拠に、日記にはあなたの名前がびっしり埋まっている。
行き場のない思いが、今も鍵付きの居場所の中でさまよってる。
“忘れよう”って思う度、忘れられなくて苦しくて。
壊れそうな脆さと、
決して壊れない強い想いが反発し合ってる。
もう欲張ったりしないって誓ったはずなのに、矛盾してるかな?
また会えることを何度も何度も夢見て、期待して、願って、望んで。
あなたの声だけでもいい。
────…聞きたかった。
ずっと……。
本当にずっと。
「───…聞きたい…」
“彩”はあたしの手で殺してしまったけれど──…
───…でもね。
“愛美”だろうがなんだろうが
いつだってあなたの声はあたしの光なの。
絶望を照らす唯一の光。
闇夜を照らす尊い光。
だから─────…
だから神様。
頑張っているあたしに、
少しだけご褒美を下さい。
───…最愛なる人の
───…朝岡さんの声をあたしに聞かせて下さい。
“生きる希望”を
どうかあたしに下さい。



