───パンフレット……
「───萌っ……
ちょっとそれ貸して!」
「ふぇ???」
─────バッ!
萌が見ているパンフレットをはぎ取り、パラパラと必死に中を開く。
───もしかしたら…
そう、“もしかしたら”。
────いや……
“もしかしたら”、ではなく“絶対”だった。
────パラ……
───────────
紅
───────────
─────バサッ!
「……っと、もぉ~!!
まなちゃんどうしちゃったのさ?
……って、わっ!?!?
何このグループ超かっこいいっ!!!」
あたしの手からスルリと落下したパンフレットのページを見て、萌はキャアキャア騒ぎだした。
「────……」
────ドクンドクン…
一瞬……
一瞬でちゃんと見れなかったけど。
───確かに……
確かに“紅”は存在していた。
─────カタカタ…
直視出来ない現実に、手が勝手に小刻みに震える。
「───…?
あれ、愛美ちゃんもしかして“紅”ってバンド知ってるの?」
「……え……えっと…」
「───このバンドは学内でも超人気だし、外部でも結構なファンいたりするんだよ~。
───中でもこの人。
この人目当てにわざわざ外部からライブ見に来る人いっぱいいるんだ♪」
「───……」
「───きゃーんっ!!!!
他のみんなもカッコいいけど、この人ズバ抜けてカッコいいっ!芸能人みたぁいっ♪」
「うわ、ホントだ。
でもこのバンド、ヴィジュアルは満点だけど、ホントに歌の実力あるの?」
「───あるよー!
好みはあるかもしれないけど、聞いたら納得すると思うよ~♪
ちなみにあたしも隠れファンだし♪」
「……へー……」
───美月、萌、華恋ちゃんの話がやたらクリアに耳に突き抜けた。
────“この人”。
三人が話していた人物は間違いなく
「───………朝岡……さん……」
────そう。
他の誰でもない、あなただったの。



