「氷室さんこんばんは♪
今日もご来店ありがとうございます。」
「あぁ愛美ちゃん、今日もありがとう。
もう愛美ちゃんも私の娘みたいなもんでね。
ついつい君と話したくてここまで足を運んでしまうよ。」
「うわぁ、本当ですか?♪お世辞でもすごく嬉しいです♪」
───…この世界に飛び込んで、まだまだ浅いかもしれないけど。
けれどあなたから離れた
“半年”という月日は、もうずっと遠い昔の事のように思えた。
……ねぇ、朝岡さん。
今立っている場所は、あなたからどれだけ遠退いた場所なのかな。
……あたしね?
朝岡さんのこと忘れられると思ってたのに全然なんだよ。
まだ夢であなたに逢える事、願ったりしてる。
またドアを開けたらあなたがいるんじゃないかって期待してたりする。
行き交う街の雑踏、この中にもしかしたらあなたがいるんじゃないかって、夢見てたりする。
────朝岡さんは?
朝岡さんはどれだけ前に進めた?
もうあたしなんか遥か昔の過去の人になってたりするかなぁ……?
それはそれで悲しいけど……。
でもね、朝岡さんは強い人だから。
あたしより、もうずっとずっと前を歩いてると思う。
───しっかり、自分の目的地を見据えて。
だからね、朝岡さんがあたしに願ってくれたみたいに。
あたしも、ただ朝岡さんの幸せを願ってるよ。
誰よりも誰よりも、最高に幸せな笑顔で笑っていて。
あなたに涙は似合わないから。
あなたは優しい人だから、きっとまだあたしなんかの幸せを願っているでしょう?
……もう願わなくていいんだからね。
あたしがその分願ってあげるから。
だから幸せになって。
誰よりも何よりも──…。
────ヒュウウウ…。
秋の寂しい空の下、今日もあたしは一人で歩き出す。
───…他の誰でもない、あなたの幸せを願って。
もうきっと……
会うことさえ叶わない、
最愛なる人に。
……だからね?
ずっとそう思っていたから、気付かなかったの。
“運命”なんてものは、
いきなり回り巡って来るんだっていうことを。



