───あたしってどんな性格してて、どんな人間なんだろう……。
この仕事について、初めて“自分”という大きな物体にぶつかった気がする。
明るい?暗い?
ポジティブ?ネガティブ?
おおざっぱ?繊細?
───…“あたし”って一体どんな人間なんだ?
「───わぁーい♪
萌ねぇ、今日佐々木さんと一緒に飲むの楽しみに待ってたんだよぉ~♪」
「そんな事言ってくれて嬉しいなぁ~、来た甲斐あったよ萌ちゃん。」
───…萌は明るいし、無邪気で。
萌に好意を寄せているお客様は、ついつい微笑んでしまうような接客だ。
「───…そうなんですか?私、その手の話は全く分からなくて。
……けどすごく興味があるので、今度是非私にも見せて下さい。」
美月はどんな会話にも柔軟に対応していくし、“次”にもサラリと自然に繋げていく接客で。
───みんなそれぞれ自分を最大限に魅せ、指名に繋げていく。
ここでは───…
ハッキリ言って、顔や容姿はそんなに関係ないんじゃないかって思った。
そんなものよりも、接客態度や対応、トーク力。
“一緒にお酒を飲んで、どれだけ美味しく楽しく飲めるか”ってとこに重点が置かれているような気がした。
……そして、それをみんな上手い具合に“指名”と言う形に変えている。
……あたしはどうだろうか。
自分が持っているものをどうやって変えれば、お客様に気持ちよく提供出来るんだろうか。
───…“自分らしさ”って何だろうか。
……ふと周りを見渡すと、団体のフリーの客が大体のテーブルを占領していた。
「───…よろしくお願いします。愛美です。」
「………」
そんな中、あたしがついたお客様は見るからに感じが悪い。
……まずったなー。
苦手だ、こーゆーの。
目も合わせず、ただ目の前にあるお酒を飲み続けている伏し目がちの客。
どこか冷たいような印象を受ける目なのに、あたしは何故か吸い寄せられるように見つめていた。
───…すごく寂しそうな目をする人…
───視線に気付かれたのだろうか。
「────…何。」
男性は沈んでいた視線を上げ、あたしに向けた。



