───…その日はヘルプについて、軽く談笑しながら雰囲気を学ぶ程度だった。
その次の日も
次の日も────……。
「───…う~ん…」
────カチカチカチ…
………いかん。
このままじゃ指名が取れない。
今まで付いたフリー客に必死で営業メール掛けつつ…
「……自信喪失……」
……何がいけないんだろ…
一応あたしなりにその人見てキャラ変えたりしてるんだけどなぁ……。
みんなの接客とか見たりして勉強してるのに何がダメなんだろ。
ってか……
それ以前に、あたしやっぱり接客向いてないのかなぁ……
────ハアッ…。
やばいな~…。
保証期間過ぎたらそれこそやばいよ。
焦るなぁ~……
「───どしたぁ?」
「───う゛、わっ!!!!!!」
視界に急に現れたのは出勤したての美月。
「なぁーによ?人を化け物見たみたいに大声上げて失礼ねぇっ。」
「…あ、あは…」
「…ったく。」
美月がちょっと怒りながら着替え始めたのを見つめていると
「───どーせ…
まだ一個も指名取れてないから焦ってるとかでしょ。」
────ギクッ!
ケータイ持ってフリーズしたあたしに、美月は溜め息をついて振り返り
「───やっぱりね。」
────ドサッ!
美月はあたしの横に来て座り、丁寧に巻いてある髪をアップにしながら
「───…てかね?
あたし見てて思ったけど、愛美の接客って妙に背伸びしてる感じがする。」
「……背伸び?」
「うん。そこまで無理に大人びた雰囲気出さなくていいんじゃない?」
「…え…」
「───無理な接客は相手に伝わるよ。」
「……じ、じゃあどうすれば…」
「それを考えてこそ、自分の接客ってもんでしょー。」
「……えー…」
そんなのよけいに頭こんがらがって分かんないし……。
口を尖らせ、再びケータイを打ち始めると
「……っていうか。
そもそもキャバ嬢“愛美”ってどんな人間?」
───え……?
「───…それをハッキリさせないと、いつまで経ってもキャバ嬢“愛美”は中途半端のままかもね。」
「───……」



